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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.50 No.429 2024.7-9 ダイジェスト

医療機器業界における業界専門紙について考える
〜専門メディアを“育てる”機運の重要性について〜

君島 邦雄 氏
広報コンサルタント
株式会社ココノッツ 取締役会長



−−医療機器業界の業界専門紙の今後をどのようにお考えですか。

【君島】将来的には「医療機器」という枠組みでは成り立たないかもしれません。「医療技術」、つまり医療テクノロジー全般にまで範囲を広げる必要があると思います。AI医療、医療DXなど国の施策に沿った新しいトレンドも包括すべきですし、読者は国内メーカーの動向ばかりでなく、海外メーカーの最新動向も求めています。国内の大手医療機器メーカーは毎日のように海外の情報を収集していますが、中小企業はそうした情報を収集するリソースが足りません。それを担うのも業界専門紙の本来の役割だと思います。
 読者が求めている情報は何かよく考え、それにフィットする記事を発信する。そうしないと、これからの業界専門紙は立ちゆかないでしょうね。


−−また、Web媒体の台頭により、紙媒体の存続が問題になっています。

【君島】今後、業界専門紙が紙媒体として存続するのは考えにくいと思います。今年10月に郵便料金が値上げされるのも経営に影響が出るでしょう。医薬品業界専門紙も近年、MR数削減の影響などもあって経営環境が厳しく、紙媒体からWeb媒体に切り替える傾向があります。ここも淘汰が始まっているように見えます。
 一方で、業界専門紙がWeb媒体に切り替えた場合、どのように「課金」するかが課題となります。あまりに高い購読料では、広く多くの人に読んでもらうことが難しい。金額に見合う内容でないと購読をやめるという判断が下されるでしょう。また、広告を取るか取らないかといった問題も出てきます。単純に紙からWebに切り替えれば持続可能ともいえないでしょう。



第二弾:医療機器業公正取引協議会における医療機関への取り組み
医療機器購入に関する医療機関の
コンプライアンスをどう考えるか(後編)

吉田 靖 氏      日本臨床工学技士会 常任理事/滋慶医療科学大学 医療科学部 臨床工学科 教授

矢ケ崎 昌史 氏  日本臨床工学技士会 常任理事/相澤病院 QI室

関尾 順市 氏    医療機器業公正取引協議会 専務理事

津藤 保 氏      医療機器業公正取引協議会 事務局長




−−近年、医療機関は経営状況が厳しいと聞いていますが、そうした中で贈収賄事件が頻発していますね。

【吉田】大学病院の場合は学外機関等から奨学寄附の提供を受けた場合、経費を計上し、適切に教育研究に活用するのが正規の道筋です。しかし、現在、企業からの寄附行為そのものはハードルが高く、自分達自身で科学研究費など公的資金の確保にたいへんな努力を払って研究資金を捻出している。従って、正規の方法以外で何かしら調達できるものがあったら、違法性を確認せずにその行為を行ってしまう可能性はあると思います。
【津藤】2021年にM大学で起こった生体情報モニターで便宜を図ったケースでは、その見返りとして企業が寄付を行いました。こうした行為は贈収賄の可能性が否定できないし、結構陥りやすいところなので気をつける必要があると思います。
  また、同じくM大学では製薬企業が奨学寄付を行い、その見返りとしてその企業が取り扱っている、ある医薬品の使用量が増加したケースがありました。
  おそらく寄付の申込書を大学当局が見て、不審な部分はないと判断したのでしょう。しかし、結果的に贈収賄事件となりました。
【吉田】M大学のケースについて、医療従事者は贈収賄ではなく、病院に対する背任行為と受け取るのではないでしょうか。それほど重大事件ではないという意識を持っているかもしれません。そのように勘違いしている人が多いと思います。
【関尾】最近の違反事例は手口が巧妙化しています。医療機器事業者から働きかける場合、医師に罪悪感を抱かせないような形や内容で持ちかける。「先生、これは大丈夫ですよ」と安心感を持たせるのです。


擬似天窓によって病院内の医療空間を変える

山下 太郎 氏
Sky Factory Japan 代表

−−ルミナスはどのような考え方に基づいて作られたのでしょうか。

【山下】基本となるのは「バイオフィリア」という概念です。1984年にハーバード大学の生物学者、エドワード・ウィルソンが提唱したもので、太古の昔から人間は多様な自然環境や気候に触れ合うことを通して、心身の健康を促進し養ってきたという説に基づいています。
 人間は自然の中に生き、無意識に自然と強いつながりを持ちます。だから、人間は自然の中にいる時にリラックスする。しかし、都市部に住む現代人はコンクリートなど無機質的なものに囲まれ、普段から心理的な負荷がかかっている。そうした心理的負担、つまりストレスや不安を軽減させるには、継続的に自然との接触を保っていなければならない、とウィルソンは説きました。
 この考えによって生まれたのが、「バイオフィリックデザイン」です。建築物に自然とのつながりをもたらす要素、自然光や自然の景観、天然素材などを取り入れているので、人間の健康や幸福感を助長し、ストレスの緩和や業務の生産性、創造性を向上させる効果があると期待されています。


−−大規模な大学病院、中規模な市中の民間病院、クリニックや動物病院といった小規模医療施設と様々な医療機関で導入されています。それぞれどのような経緯で納入に至るのでしょうか。

【山下】当初は様々な学会の展示に参加し、デモンストレーション機器を出品しました。それを見て興味を持たれた医師や放射線技師の方が接触してきました。逆に、名刺交換した方にこちらからアプローチすることもありました。
 国立大学病院は、放射線技師の横のつながりで放射線科に導入される場合が多いですね。また、施工された病院の先例を見て、問い合わせしてくることもあります。
 クリニックや民間病院では、改修や移転の際にトップダウンで導入されます。理由としては競合病院との差別化、地域連携している病院の場合は地域への還元です。来院する患者さんのストレスを軽減することを目的として導入しています。


第99回日本医療機器学会大会
メディカルショージャパン&ビジネスエキスポ2024
6月20日より3日間、パシフィコ横浜で開催

大会長講演「医療と技術の融合をマネジメントで支えDXで加速したい!」

大会長 林 正晃 氏
日医工副理事長
第一医科株式会社 代表取締役社長


 日本医療機器学会は昨年の2023年に設立100周年を迎えました。当学会の目的は「産学連携」、「医療技術、機器の改良開発」、「医療安全」であります。主な会員は医師や医療従事者ですが、それに加え工学系研究者や企業会員も多く参加されています。
 6月20日、当学会の年次総会において1年間の活動報告が行われました。当学会では継続的に「医療安全」、「クリニカル・エンジニアリング」、「感染」、「供給」などをテーマに日本全国で研究会、講習会、カンファレンスなどを実施しています。
 今回の大会テーマ『医療と技術の融合をマネジメントで支えDXで加速する』では「マネジメント」が重要なキーワードとなります。
 医療機器企業におけるマネジメントには、品質管理システム、QMS、ヒューマンリソースマネジメント、機器の管理を行う上でのアセット・マネジメントなど様々なものがあります。人間に関わるマネジメントでも、メーカーと機器を利用される医療従事者との関係、医療機器企業の中で管理者と現場の関係など、マネジメントが関わる範囲は非常に幅広いと思われます。
 マネジメントを行うにあたって重要なのは、外部環境をきちんと把握することです。日本の場合、その1つは「人口減少」、もう1つは「高齢社会」です。人口が減少していくなかで高齢者だけが増えていく。医療機器に関わる仕事をされている皆さんも特に注視すべき問題、仕事をしていく際に大前提となる問題だと思います。