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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.50 No.426 2023.10-2024.1 ダイジェスト

第一弾:医療機器業公正取引協議会における医療機関への取り組み
医療機器の公正競争規約を医療機関へ啓発することの意義

関尾 順市 氏
医療機器業公正取引協議会 専務理事

津藤 保 氏
医療機器業公正取引協議会 事務局長





−−明らかに医療機関側からの働きかけで行われた違反事例を紹介してください。

【関尾】典型的なのは、三重大医学部麻酔科教授と医療機器メーカーとの間で行われた医療機器納入を巡る贈収賄事件でしょう。教授が「寄付をしないところとは会わない」と言ったことが発端となっています。医療機器メーカー側は会わなければ商売にならないので、寄付に応じざるを得ない。このケースは寄付を名目にしたなかなか手が込んでいるやり方で、贈収賄事件としては初めて注目されたものでした。
【津藤】このケースは金銭の受入れ窓口が、医薬品と医療機器では違っていることが特徴的です。医療機器については教授が作ったNPO法人が金銭の受入れ窓口であったことも注目されました。医薬品メーカーの場合は表面的には正当な手続きを踏み、大学も奨学寄付として受け入れています。このケースの新しいところは、司法が奨学寄付を薬の選定を行う医師への賄賂として認定したことでした。
【関尾】医療機器の場合は医師を代表者としたNPO法人を設立し、そこで金銭を受領しています。直接、医師の個人口座に入るのではなく、団体を通すことによって医師個人の懐に入っていない形にした。それが何となく罪悪感を和らげることになったのかもしれません。

−−最近では、2023年9月に国立がん研究センター東病院の肝胆膵内科の医師がステントの納入を巡って収賄容疑で逮捕されました。

【関尾】この案件は2022年の大和高田市立病院における白内障眼内レンズを巡る贈収賄事件と比較すると分かりやすいと思います。大和高田のケースは事業者側が眼内レンズの手術動画を撮影して欲しいという名目で医師に依頼したものです。製品の使用と手術動画の撮影が一体化している。東病院のケースは名目上、市販後調査を依頼して調査のために製品を使用してもらう形です。動画撮影と市販後調査、依頼の内容は違いますが、大和高田と東病院のケースは図式が同じなのです。

希少疾患「慢性GVHD」の治療に対応する
医療機器の位置づけと可能性

吉村 淳一 氏
マリンクロットファーマ株式会社
プロダクトマネージャー セールス&マーケティング

安藤 大輔 氏
株式会社アムコ 医科三部 課長



−−慢性GVHDとはどのような疾患なのでしょうか?

【吉村】白血病をはじめとした血液悪性腫瘍、いわゆる血液がんは抗がん剤で治療しますが、抗がん剤だけでは治癒しないケースがあります。そのため、ある程度リスクが高い患者さんの場合は「(同種)造血幹細胞移植」という治療を行うことになります。
 患者さんには大量の抗がん剤や放射線治療が実施された後、ドナーの血液が移植され、この血液が生着することによって骨髄機能が回復します。しかし、回復した血球成分はドナー由来であるため、その中のT細胞が患者さんの臓器を「他」と認識して攻撃することがあります。その結果、皮膚、肝臓、大腸に加え、肺や唾液腺、涙腺などにさまざまな臓器に障害が現れ、重症度やその経過によっては致死的な状況となる場合が出てきます。
 治療の第一選択はステロイドによる薬物療法ですが、ステロイド治療を受けている患者さんの約50%は抵抗性あるいは耐性を持つといわれています。しかし、それに対する2次治療は本邦のガイドラインにおいてアルゴリズムが明確に定義されておらず、複数の治療選択肢が掲載されているのみで、標準治療はありません。また保険診療内で可能な2次治療は限られており、この市場はアンメットニーズの高い領域となっています。

−−同種造血幹細胞移植の実施数は全国で年間約3800例。そのうち慢性GVHDとなるのはおよそ全体の30%、さらに慢性GVHD対するステロイド療法に適さない患者がこのうちの50%と見込まれている。推定される対象患者数は600〜700人です。かなり少ないですね。

【吉村】治療対象は675例と見込まれていますが、実際はもう少し少ないと思います。
 これまでステロイド療法が効かなくなった患者さんに対する治療法はありませんでした。血液がんの治療のために造血幹細胞を移植したにもかかわらず、免疫抑制を行うと血液がんの再発リスクが高まります。また、感染症に罹患する可能性も出てくる。基本的には免疫を抑えたくないが、手段がないので別の免疫抑制剤で抑えざるを得ない。そこで免疫を抑えなくて済む治療法が開発されることになりました。
 それが我々の体外フォトフェレーシス(以下ECP)による「Cellex ECPシステム」という治療法です。海外では20年以上前から行われていました。

レポート/第3回医療用・介護用ロボット研究会
国産手術支援ロボットhinotori™の開発と臨床応用

日向 信之 氏
広島大学大学院医系科学研究科 腎泌尿器科学 教授

2015〜2022年に5つの試作機を作る

 本邦でロボット支援手術が初めて保険適用になったのは2012年の前立腺全摘除術においてでした。以後、泌尿器科領域に限ると2016年腎部分切除術、2018年膀胱全摘除術、2020年仙骨膣固定術、腎盂形成術、2022年根治的腎摘除術、腎尿管全摘除術、副腎摘出術などが保険適用になっています。このような状況の中で、私は手術支援ロボットhinotori™の開発に携わることになりました。
 2013年、私が以前勤務していた神戸大学の上司から産業用ロボットを視察するようにとの指示があり、川崎重工業の西明石工場を見学しました。実際に見て、これなら手術支援ロボットが開発できると感じました。しかし、医療には厳しい制約があり、ロボット技術を持っていても手術支援ロボットの開発はそう簡単に出来るものではありません。開発においては苦労の連続でした。
 開発への取り組みは2015年頃から始まりました。まず行ったのは、医工と産学における開発サイクルの確認と役割分担でした。我々、医と学では既にロボット支援手術の実施に必要な課題探索と分析を行っていました。どのような課題があるのか分かっていましたし、試作機があれば分析ができる状態にありました。工と産では産業用ロボットが既に開発されていたので、ロボット製造技術、密集回避技術、ヒトとの共存技術などを持っていました。
 そこで、まず課題と技術に基づいた試作機を製造することになりました。試作機を我々が実際に使用して評価を行い、情報をフィードバックする。すると、次の課題が出てくることになります。こうしたサイクルを回すことで開発を進めていきました。2015年から2022年までに5つの試作機が作られています。

アジア・リージョナルオフィスを足場に
グローバルカンパニーへの飛躍に貢献したい

金 在光(キム・ジェクワン)さん
サクラファインテックジャパン株式会社
海外営業本部 本部長代理

−−韓国人のキムさんの出身はどちらですか。

【キム】生まれはソウル近郊の国際空港で有名な仁川(インチョン)です。大学を卒業する24歳まで実家に住んでしました。24歳というと大学を留年したのかと日本の方は思うのでしょう。しかし、韓国の場合、30歳までに2年から2年半の兵役に就くのが国民の義務になっています。大学生のほとんどは在学中に休学して兵役に就きます。私は2年半、陸軍に所属して戦車を操縦していました。

−−大学を卒業して最初に就職した韓国の会社はどのような職種だったのでしょうか。

【キム】電線やケーブルなど金属材料を製造する工業系の会社でした。6年ぐらい勤めましたが、そこでは経営企画や営業企画、マーケティング関連の業務を行っていました。現在、私は海外営業の仕事をしていますが、当時の会社では韓国内の仕事を担当していました。現在とは違って、外国人と交流することほとんどありませんでした。

−−その6年間を経て次はどうされましたか。

【キム】日本の会社に就職しましたが、実は就職する前から日本に行くことは決まっていたのです。まず来日して、それから半年の間、日本で就職活動を行いました。韓国で日本の就職先を決めてから来日したわけではありません。

−−日本で働きたいと思った理由を聞かせてください。

【キム】先ほど言ったように、最初に働いていた会社では国内市場の営業企画やマーケティングを担当していました。しかし、私としては海外市場での営業企画やマーケティングをやりたかった。この会社で働いていたらこの先も変わらないのではと考え、日本で働こうと思いました。