ホーム / 日医工ジャーナルダイジェスト

日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.43 No.397 2016.5-8 ダイジェスト

医工連携「医療用機能・要素部品パビリオン」が
大阪で開催される
メディカルショージャパン&ビジネスエキスポ2016

「メディカルショー ジャパン&ビジネスエキスポ2016(第91回日本医療機器学会大会併設機器展示会)」が6月23日から25日まで3日間、大阪市の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて開催された。メディカルショー ジャパン&ビジネスエキスポの大阪開催は2006年以来、10年ぶりのことである。展示会場内の特設エリアには日医工と(株)インテリジェント・コスモス研究機構(略称:ICR)の共催による「医療用機能・要素部品パビリオン」が併設され、34社のものづくり企業が参加した。今回は展示スペースが約半分の縮小となったため例年に比べて少ないブース数となったが、相変わらず熱心な商談があちこちで見られた。
ものづくり企業は青森、秋田、岩手、山形、宮城、群馬、埼玉、東京、静岡、京都、大阪と広い範囲から参加しており、「医療用機能・要素部品パビリオン」も第6回目を迎えて、ICRと日医工の活動エリアが確実に拡大していることを思わせた。分野別でみてみると機械装置3社、金属加工12社、受託製造2社、受託開発3社、樹脂加工4社、センサー・計測器4社、プレス加工2社、ソフトウエア開発1社、表面処理1社、その他2社という内訳で、前回の横浜開催と比較すると機械装置分野での参加が減少している。企業数が最も多かったのは前回と同じく静岡県で、9社の参加であった。今回のメディカルショー ジャパン&ビジネスエキスポの入場者数は延べ4,400人、医療用機能・要素部品パビリオンへの入場は約2,800人で比率としては65%の入りとなった。

歴史医療機器資料展において麻酔器と人工呼吸器をテーマ展示
日医工と日本医科器械資料保存協会の共同企画

「医療機器資料展」はメディカルショー ジャパン&ビジネスエキスポにおける特別企画として2009年以来毎回行われてきた。展示されてきた歴史的医療機器は印西市の印旛医科器械歴史資料館所蔵のもので、これまでは医療機器の歴史を紹介するという形で展示されてきた。しかし、今回は歴史的医療機器のみならず今使用されている最新医療機器も展示し、過去と現在を見比べて医療機器への理解を深めるという試みがなされた。いわゆる「温故知新」である。テーマは麻酔器と人工呼吸器、現在使用されている医療機器の展示については日医工の会員企業に出展のご協力を願った。展示は歴史的医療機器を扱うエリアと現代の医療機器を扱うエリアを2つに分けて展開した。
 最新機器展示エリアにおいて人工呼吸器で協力していただいたのはアイ・エム・アイ、TKB、チェスト、ドレーゲル・メディカルジャパン、日本光電工業の各社、麻酔器ではGEヘルスケア・ジャパン、泉工医科工業の各社。フクダ電子には人工呼吸器と麻酔器の両方でご協力いただいた。各企業からはそれぞれ説明員もつけていただき、たいへん有意義な展示となった。
 歴史を紹介する展示にはメインに麻酔器、人工呼吸器を配置し、その周辺に華岡青洲が使用した外科器具のレプリカを置いていた。華岡青洲は、記録に残るものとしては世界で初めて全身麻酔を用いて乳癌手術を行った江戸時代の医師として知られる。患者の苦しみを和らげるために麻酔薬の研究を始めて薬草から全身麻酔薬「通仙散」を完成させた。華岡青洲に関する展示はこれまでに何度も行ってきたが、麻酔・人工呼吸をテーマにした今回ほどぴたりと合った例はなかったように思う。

知財戦略「必要性」と「可能性」を開発プロセスに織り込むことがポイント

山越 淳名古屋国際特許業務法人 東京支店
弁護士/行政書士

―医療機器メーカーに勤務のご経験があるとお聞きしていますが。【山越】大学で電子工学を勉強した後、東芝メディカルの東京サービスで勤務、シーメンス旭メディテック(現シーメンス・ジャパン)に転職して薬事を担当し、必要性を感じて弁理士登録をしました。2013年に名古屋国際特許業務法人に入社、昨年、行政書士の登録も行いました。―先生は定期的に中小企業向けのセミナー等で医療機器に関する講演をされています。特に目を引いたのが「医薬品医療機器等法、特許法を考慮した医療機器の開発」という項目でした。特許法を考慮しないことで想定されるリスクにはどのようなものがあるでしょうか。 【山越】1つ目は「自社が製造した医療機器が第三者の特許権を侵害してしまうリスク」。これにより特許権に基づく差し止めや損害賠償を請求される可能性が出てきて、侵害回避のために設計変更や販売の停止を余儀なくされる場合もあります。  医療機器開発は他の産業と同じくスピード勝負です。また、医薬品医療機器等法上の必要な手続きに時間を要することも多いため、開発担当者はできるだけ早く上市できるように開発を急ぎます。ところが最終段階の調査で製品に必要な技術を他社が特許として取得していたことがわかる。そこで開発はストップ。多大に費やしたお金と時間と手間が無駄になってしまうケースです。  2つ目は「模倣品を製造した会社が先に上市してしまうリスク」。自社が特許権等を持たなければ模倣品製造の差し止め請求はできません。承認や認証を取得するには時間がかかるので、その間に他社に市場を独占されてしまいます。  3つ目は「同様の製品が多数出回り、製品価値が低下してしまうリスク」。せっかく苦労して承認を取得しても、自社が特許権等を持たなければ模倣品製造の差し止めをすることはできないため、製品の市場価値が大幅に下がってしまいます。

講習会公取協日医工支部主催の「公正競争規約等勉強会」が開催

今回の勉強会の1つ目のテーマは「直近の相談事例について」。公取協指導・審査委員会の後藤秀郷副委員長が説明を行った。相談事例1は「医療機関から創立30周年記念事業として記念祝賀会の開催と多目的ホールの建設への寄付を依頼された。依頼を受けていいものだろうか」。記念祝賀会については「医療機関等の記念行事等」に該当する場合に限り、寄付を行うことはできるが、多目的ホールの建設への寄付は、医療機関等の費用の肩代わりとなるため規約で制限される。こうしたことから、この寄付要請には応じることはできない事例である。
 相談事例2は「某大学から大学病院の100周年記念事業として寄付の依頼を受けた。その中に外来棟100周年記念施設としてエスカレーターの設置が含まれている。このような依頼に応じることは規約上の問題はあるか」。同案件の場合、寄付の目標額のうち記念施設の設置費用が7割を占めることや、記念事業の全費用を寄付金で賄おうとしていることから、寄付に応じることは規約上できない。
 相談事例3は「ある学会から、一般市民公開講座で麻酔器、電気メスを一般市民に操作体験させたいので、医療機器の無償貸出しを頼みたい、また、講座当日のお手伝いもお願いしたいとの依頼があった。対応していいものか」。医療機器の無償貸出しは“医療機関等に当たらない団体に対する便益の提供”として、規約では制限されない。ただし、お手伝いは“労務提供”に当たり、学会会合に際しての労務提供は過大にわたらない範囲において、公正かつ透明な手続きに従って行う必要がある。例として、クローク、受付、会場内の誘導(駐車場までの誘導は含まない)、照明(会場全体のスイッチのオンオフ)程度の簡易な作業など。
 このほか、「購入済みの医療機器と同一機種の他の診療科への貸出しについて」、「団体との講演会の共催について」の事例紹介が行われた。