日医工ジャーナル ダイジェスト
Vol.46 No.409 2019.7-9 ダイジェスト
安心安全PMDAの新理事長、抱負と将来構想を語る
〜前例にとらわれない新しいチャレンジを目指す〜
藤原 康弘氏
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長
―ペーシェント・ファーストの施策の1つとして、「患者参画ワーキンググループ(WG)」を5月28日付けで新設されました。
【藤原】これは医薬品や医療機器の審査や安全対策に、患者さんの意見を反映する方策について検討するWGです。2年後をめどに患者参画の在り方に関するガイダンスを作成したいと考えています。また、患者さんや国民に対する広報の在り方についての見解もまとめる予定です。
現在の規制環境下において薬事行政に患者さんが参画することで何ができるかを検討してもらいたいと思っています。薬事行政に患者さんが参画するイメージは、最も先行している米国のFDA(食品医薬品局)に見ることができます。FDAにはアドバイザリーコミッティーという日本の薬事審議会に近い組織があり、ここに患者代表や消費者代表が参画し、審議や承認の判断に深く関わっています。日本の厚生労働省の一部の部会などでは患者代表が参加されている例もありますが、FDAのようにシステムとして整備されているわけではありません。
患者さんに参画してもらうには、まず、患者さんの教育が必要だと思います。日本のみならず世界の多くの患者団体の場合、意見や要望のほとんどは患者さん自身の経験をもとにしたものです。しかし、多くの患者さんの意見を集約し、中立的な立場で発言しないと薬事行政に内容を反映するのは難しいでしょう。
米国や英国ではこうした患者教育がきちんと行われています。例えば、FDAでは患者さんに対してアドバイザリーコミッティーに出席する際の作法、臨床試験や薬事行政の方法論を教育するなど事前にしっかりトレーニングし、その上で発言する機会を設けています。そこまで行わないと患者参画はなかなか難しいと思います。
発信提言医療機器業界の働き方改革
「働き方改革関連法案」についての考え方
青木 哲郎氏
青木経営パートナーオフィス(認定経営革新等支援機関)
MBA・中小企業診断士・特定社会保険労務士・行政書士
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・CFP
■働き方改革が目指すもの
厚生労働省のweb siteでは、我が国の「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」について言及しており、こうした状況にあって就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境づくりの重要性を指摘している。「働き方改革」とはこうした課題を解決するため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することにある。最終的には、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指している。
■働き方改革テーマ
2017年3月28日に働き方改革実現会議が決定した「働き方改革」のテーマは、①非正規雇用の処遇改善(同一労働同一賃金)、②長時間労働の是正(罰則付き時間外労働の上限規制)、③柔軟な働き方(テレワーク等)、④病気の治療と仕事の両立(病気治療、育児介護)、⑤高齢者の就業促進、⑥外国人材の受入などが挙げられている。
労働契約における主要な労働条件は「賃金」及び「労働時間」であるが、この点については「働き方改革」でも同様であり、賃金としての「同一労働同一賃金」及び労働時間としての「長時間労働の是正」がその主要テーマとなっている。
発信提言法規関連委員会「小委員会」で薬事、
QMSの若手プロを育てる
飯田 隆太郎氏
法規関連委員会 委員長
日医工法規関連委員会は2017年の年末から、委員会の新メンバーの募集を行い、20~30代の若手14名が集まりました。男性11名、女性3名で構成される若手メンバーは現在、本委員会の下に位置する小委員会で積極的に委員会活動を行っています。私、飯田も参加しております。
法規関連委員会は、医療機器の法規制全般に関わるさまざまな課題に取り組むとともに、規格・基準の作成や行政当局との折衝・調整、または、日本医療機器産業連合会(医機連)への委員派遣を行う一方、会員企業向けの実務者講習会も積極的に企画、開催しています。
今後とも会員企業に役立つ継続性・発展性のある委員会活動を維持していくため、若手中心の小委員会を設置し、専門性を持った人材の育成と、法規関連分野における次世代リーダーを育成するのが小委員会の目的です。
募集したのは会員企業各社で法令対応業務やQMS活動等に従事している20~40代のエキスパートです。2017年12月14日開催の「ISO13485:2016及び改正QMS省令のための講習会」でも募集チラシを配布しました。
その結果、募集締め切りの2018年1月末までに14名が参加してくれることになり、すぐに委員会活動を開始しました。開催頻度は2カ月に1回程度で、法制度関係の最新の課題を共有し、業界としての取り組みを理解してもらうとともに、行政当局との交渉の在り方や建設的な議論の進め方、さらに自分の会社だけでなく業界全体の利益を考える姿勢などを学んでもらっています。
委員会では、行政・業界の最新動向や法規制上の様々な課題について私から情報提供させていただき、それに対して委員の皆さんから思い思いの意見を述べていただくスタイルを取っていますが、委員の皆さんが忌憚なく自分の意見が言えるような雰囲気づくりを常に心がけています。
機器開発不眠症治療用スマホアプリの開発に端を発した
ブロックチェーン技術による臨床モニタリングの意義
上野 太郎氏
サスメド株式会社 代表取締役
医師/医学博士/日本睡眠学会 評議員
―不眠症治療用スマホアプリ「yawn」はどのような理由で開発が始められたのでしょうか。
【上野】現在、不眠症の治療は薬剤処方が中心です。睡眠障害外来で診療していると、一般内科などで治療を受けている患者さんの多くは、睡眠薬の多剤処方を受けていることが分かります。睡眠障害を改善するために薬が増える方向に働くのはある面仕方がないことだろうと思います。しかし、日本睡眠学会や厚生労働省では常用量依存等の副作用の可能性を考慮し、ベンゾジアゼピン系薬剤を減らす方向にスタンスを取るようになりました。2014年の診療報酬改定において向精神薬の適正化を目的として、処方料・処方箋料が減算となるように多剤処方制限が設定されたほか、2018年の診療報酬改定では処方期間についても言及するなどその範囲を拡大しています。
睡眠障害治療で薬剤を使用しない方法として非薬物療法の「認知行動療法」があります。現在、この治療法は米国において不眠症治療の第一選択に位置付けられ、原発性不眠症や精神生理性不眠などの一次性不眠症、がんや疼痛、うつ病に伴う二次性不眠症などを含む慢性不眠障害、高齢者の不眠症、睡眠薬長期服用中の不眠症などに対して有効性が示されています。
不眠症における認知行動療法とは「眠りに対する思い込み」や「眠らなければならない」という強迫観念や行動を正して、その個人に合った睡眠習慣を見つけていく方法です。日本の不眠症治療のガイドラインにおいて認知行動療法を推奨すると記述されていますが、まだ米国のように第一選択には至っていません。認知行動療法はFace to Faceで行う労働集約型の治療法ですので手間がかかり、現在の日本の医師のマンパワーでは実行がなかなか難しいでしょう。しかし、エビデンスとして歴史があり、薬物治療と比較しても長期的予後が優れているこの治療法を何とか広めたいと思いました。
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