日医工ジャーナル ダイジェスト
Vol.42 No.396 2016.2-4 ダイジェスト
診療報酬最大の改定ポイントは「イノベーション評価」の見直し
三宅 邦明 氏厚生労働省 医政局 経済課
医療機器政策室 室長
―本年4月より平成28年度診療報酬改定が施行されました。医療機器という観点から今回の改定のポイントを教えていただけますか。【三宅】いくつか制度改定がありました。最大の改定ポイントは「イノベーションの評価」に関する見直しです。「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」(以下「ニーズ検討会」)において選定された医療ニーズの高い医療機器(以下「ニーズ品」)に関して、3つのメリットが付加されました。
その中で最も大きい改定が「機能区分の特例の対象への追加」です。ニーズ検討会における結果を踏まえて、厚生労働省が行った公募に応じて当該製品を一定期間内に臨床で使用できるように国内導入した製造販売業者は、当該製品および「当該公募品目の次に保険適用希望書が提出されC1(新機能)またはC2(新機能・新技術)として決定された製品」の合計2製品について、「機能区分の特例の対象」にするというものです。
この特例対象になりますと、2回の診療報酬改定を経るまで、改定の際の新価格の決定のされ方が他製品より優遇されます。通常は同じ機能区分内の全ての製品の実勢価格の平均値が新価格に反映されますが、特例対象となると同じ機能区分に追加された他の競合品の実勢価格に影響されず、自社製品の販売価格だけが新価格に反映されることができるということです。ニーズ検討会で公募されるようなオーファン的なデバイス(医療上の必要性は高いが必要とする患者数が少ない医療機器)を国内導入してもらうための制度上のオリジナリティのある工夫だと思います。
医工連携有効な外部リソースとしてのベンチャー企業の活用
大下 創 氏Med Venture Partners 株式会社 代表取締役社長
【大下】政府でも医療機器が重点分野として取り上げられる中、政府系の投資会社である「産業革新機構(INCJ)」(編集部注:「産業競争力強化法」に基づき設置)も、医療機器ベンチャー企業への投資を検討しました。しかし、日本には投資対象となるような医療機器のベンチャー企業がほとんど存在せず、なぜ日本には医療機器分野でのベンチャー企業が生まれないのかについて検討が行われました。
理由についてはいくつか考えられましたが、その1つとして、米国のように医療機器専門のベンチャーキャピタルが存在しないことが問題ではないかということになり、まず医療機器専門のベンチャーキャピタルを作り、ベンチャー企業を創業期から支援する必要があるという考えの下、2013年に弊社が設立されました。【大下】そうですね。日本にも、特にITやバイオ等の分野ではベンチャーキャピタルはあります。しかし、医療機器に特化したものは初めてでしょう。 医療機器産業は特殊で、それ専門の知識や経験がないと、特にシードやアーリーステージのベンチャーへの投資は難しいのが現状です。最終的に、産業革新機構以外にも、みずほ銀行、ウシオ電機、田中貴金属、医療機器メーカーのメディキットの計5社から総額60億円の出資を受けて、ファンドが設立されたのです。
知財戦略 海外マーケット進出に不可欠な知的財産戦略
天野 斉 氏國立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
知的財産部 部長
初めにお伝えしたいのは、知的財産は事業戦略を支える土台であり、かつ事業戦略を実現するツールであるということです。ビジネスを展開するためには、必ず知的財産と一体で考えることが重要であり、医療機器産業にしても同様です。ぜひ医療機器の事業戦略の中核に知的財産戦略を置いていただきたいと思います。
そのためのお手伝いをするのが、われわれAMEDの知的財産部です。
まず、知的財産について基本的な認識を共有したいと思います。わが国の「知的財産基本法」では、知的財産とは、発明、考案、意匠、著作物等の創作や、商標、商号等の商品・役務の表示、そして営業秘密等の事業に有用な技術・営業上の情報であると定義しています。そして、それらを保護する権利が特許権、実用新案権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産の権利であると規定しています。
知的財産は「もの」ではなく、無形の財産的価値を有する「情報」であることに注目してください。情報は容易に模倣されるという特質を持っているため、多くの人が同時に利用することができます。そうすると、創作意欲を失ったり、せっかく生み出した創作等にただ乗りされないように隠したり、また、同じ表示を異なる者が使って営業上の信用が害されたりします。知的財産権制度とは、こうしたことから創作者に一定の条件のもとで創作や信用を保護する権利を与え、自由に利用できる情報と創作者の利益とを“社会が必要とする限度”でバランスさせて産業の発達を促す制度です。
政府は「知的財産立国」の実現を目指し、2002年に「知的財産戦略大綱」を発表しました。これはものづくりに加えて、技術、デザイン、ブランドなど価値ある「情報づくり」、すなわち無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより、わが国経済・社会の再活性化を図るというビジョンに裏打ちされた国家戦略です。
研修施設病室のアメニティの向上と看護業務の
効率化に焦点を当てたモデルルーム
東京(本社)ショールーム
パラマウントベッド 株式会社
初めにお伝えしたいのは、知的財産は事業戦略を支える土台であり、かつ事業戦略を実現するツールであるということです。ビジネスを展開するためには、必ず知的財産と一体で考えることが重要であり、医療機器産業にしても同様です。ぜひ医療機器の事業戦略の中核に知的財産戦略を置いていただきたいと思います。
そのためのお手伝いをするのが、われわれAMEDの知的財産部です。
まず、知的財産について基本的な認識を共有したいと思います。わが国の「知的財産基本法」では、知的財産とは、発明、考案、意匠、著作物等の創作や、商標、商号等の商品・役務の表示、そして営業秘密等の事業に有用な技術・営業上の情報であると定義しています。そして、それらを保護する権利が特許権、実用新案権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産の権利であると規定しています。
知的財産は「もの」ではなく、無形の財産的価値を有する「情報」であることに注目してください。情報は容易に模倣されるという特質を持っているため、多くの人が同時に利用することができます。そうすると、創作意欲を失ったり、せっかく生み出した創作等にただ乗りされないように隠したり、また、同じ表示を異なる者が使って営業上の信用が害されたりします。知的財産権制度とは、こうしたことから創作者に一定の条件のもとで創作や信用を保護する権利を与え、自由に利用できる情報と創作者の利益とを“社会が必要とする限度”でバランスさせて産業の発達を促す制度です。
政府は「知的財産立国」の実現を目指し、2002年に「知的財産戦略大綱」を発表しました。これはものづくりに加えて、技術、デザイン、ブランドなど価値ある「情報づくり」、すなわち無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより、わが国経済・社会の再活性化を図るというビジョンに裏打ちされた国家戦略です。
ジャーナルダイジェスト一覧
- No. 429 2024.7-9
- No. 428 2024.4-6
- No. 427 2024.2-3
- No. 426 2023.10-2024.1
- No. 425 2023.7-9
- No. 424 2023.4-6
- No. 423 2023.2-3
- No. 422 2022.10-2023.1
- No. 421 2022.7-9
- No. 420 2022.4-6
- No. 419 2022.2-3
- No. 418 2021.10-2022.1
- No. 417 2021.7-9
- No. 416 2021.4-6
- No. 415 2021.2-3
- No. 414 2020.10-2021.1
- No. 413 2020.7-9
- No. 412 2020.4-6
- No. 411 2020.2-3
- No. 410 2019.10-2020.1
- No. 409 2019.7-9
- No. 408 2019.4-6
- No. 407 2019.2-3
- No. 406 2018.10-2019.1
- No. 405 2018.7-9
- No. 404 2018.4-6
- No. 403 2018.2-3
- No. 402 2017.10-2018.1
- No. 401 2017.7-9
- No. 400 2017.5-6
- No. 399 2017.2-4
- No. 398 2016.9-2017.1
- No. 397 2016.5-8
- No. 396 2016.2-4
- No. 395 2015.10-2016.1
- No. 394 2015.7-9
- No. 393 2015.4-6
- No. 392 2015.2-3
- No. 391 2014.10-2015.1
- No. 390 2014.7-9
- No. 389 2014.5-6
- No. 388 2014.3-4
- No. 387 2013.10-2014.2
- No. 386 2013.7-9
- No. 385 2013.5-6
- No. 384 2013.2-4
- No. 383 2012.10-2013.1
- No. 382 2012.7-9
- No. 381 2012.4-6