ホーム / 日医工ジャーナルダイジェスト

日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.49 No.423 2023.2-3 ダイジェスト

第2期を迎えた医療機器基本計画の概要とポイント

鶴田 真也 氏
厚生労働省 医政局
医薬産業振興・医療情報企画課 医療機器政策室 室長

 第2期医療機器基本計画が閣議決定されたのは2022年5月31日であり、すでに施行されています。この計画は医療機器の法律に基づくものですが、厚生労働省だけではなく、経済産業省や文部科学省とも連携しながら取り組むものとなります。従って、この計画に示されたことを具現化するために、各省は記載された内容を意識しながら政策の企画立案に取り組むことになります。
 今回、プログラム医療機器を含めて研究開発を推進する重点分野として、次の5分野が選定されました。具体的にどのような医療機器を想定しているのか例示します。
①日常生活における健康無関心層の疾病予防、重症化予防に資する医療機器:家庭用心電計プログラムや2型糖尿病患者に対するコーチングアプリ
②予後改善につながる診断の一層の早期化に資する医療機器:大腸内視鏡画像をAIによって解析し、ポリープ等を検出するプログラム
③臨床的なアウトカムの最大化に資する個別化医療に向けた診断と治療が一体化した医療機器:血糖度をモニタリングし投薬を行うインスリンポンプ
④高齢者等の身体機能の補完・向上に関する医療機器:運動を補助するロボットスーツ
⑤医療従事者の業務の効率化・負担軽減に資する医療機器:検査者に最適なプローブ位置を示すプログラム
 第2期医療機器基本計画においては、この5分野に研究開発の重点が集まることが重要だと考えています。そして、それが本当に行われているかをしっかりフォローしなければなりません。そのことは「第2期医療機器基本計画を推進するために必要な事項」に明記されており、その中には、「KPI」(Key Performance Indicator:重要業績評価目標)を定めることが盛り込まれています。

インフルエンザ診断補助を行うAI医療機器「nodoca」(後編)
公的保険に新機能・新技術として日本初の事例に

沖山 翔 氏
アイリス株式会社 代表取締役/医師
福田 敦史 氏
アイリス株式会社 取締役/CTO
安見 卓志 氏
アイリス株式会社 ハードウェア部門長

−−−福田さんはCTO(最高技術責任者)を担当されています。前職でもそうした仕事をされてきたのですか。

【福田】私は東北大学を卒業した後、外資系コンサルティング企業に入社し、その後、IBM東京基礎研究所でモデル駆動型開発の研究など複数の研究開発プロジェクトに携わり、企業における研究開発の基礎を学びました。IBM退職後は2つの企業で100名規模の開発組織のマネージャーや新規事業の立ち上げ、ゼロからの開発組織体制の構築などを行いました。2018年10月、アイリスに入社した後はAI医療機器「nodoca®(販売名nodoca(ノドカ))」(以下「nodoca」)におけるAIのディープラーニング・モデルやソフトウェアの開発を中心に担当し、当時は安見と私の2人しかエンジニアがいなかったため、見よう見まねで回路設計などにも携わっていました。
 最初のカメラの試作品は約半年ほどで作りました。しかし、試作品で撮影した写真データは、AI的には全く使い物になりませんでした。この結果を受けて、これは早急に何とかしなければならないと焦りました。このままでは私が定年を迎えるまで開発に時間を要するのではないか? そんな恐怖すら覚えました。
 ちょうどその頃、1人の若いAIエンジニアのインターン生が入社し、その彼が私の仕事を手伝ってくれることになりました。彼は約1~2週間で私の手法の問題点を指摘し、さらに精度向上のための優れた手法を提案し、それらのアイデアを圧倒的なスピードで実現していきました。その結果、AIの精度が大幅に改善されました。そこで実感したのは、優秀なプレーヤーと優秀な指導者はイコールではないということでした。私はプレーヤーとしての役割ではなく、優秀なプレーヤーが気持ちよく仕事できる環境を整え、彼らをチームとしてまとめる役割の方が向いている、その方がアイリスのAI開発をスピード感をもって行うことができる、そう確信しました。

若手の鋼製医療器械職人の独立支援を行う
インキュベーション施設を板橋に開設

 日医工ジャーナルでは2021年7-9月号において「鋼製医療器械職人のインキュベーション事業に取り組む」という記事を掲載した。この事業は日本鋼製医科器械同業組合(以下 同業組合)の元広報担当であり、株式会社マイステック(本社 北区田端)の代表取締役でもある金井しのぶ氏の取り組みだが、マイステックでは2022年7月、「ITABASHI Co-working factory」という名称でインキュベーション施設を板橋に開設した。
 この施設は同業組合理事長の荒井儫氏が代表取締役を務める株式会社荒井製作所の板橋工場を借り受けて実現したもので、若手職人の支援・育成を目的として設立された。施設内は事務スペースと作業スペースに分かれ、作業スペースは個々で行う場所と共同で使用する共有スペースで構成されている。共有スペースにあるグラインダーなどの設備は同業者の協力によって揃えられたという。
 運営としては独立を希望する若手職人にスペースと設備を貸し出すという形を取っている。自分の仕事だけ行っても構わないし、互いに助けあったりすることもできる。場合によってはマイステックの仕事を引き受けることもある。鋼製医療器械職人の仕事のやり方としては前例がなく、新たなビジネスモデルの創出を目指した試験的な取り組みでもあるようだ。賃料は光熱費込みで6万円という設定で、現在3人の職人がこの施設を利用している。

レポート/第1回医療用・介護用ロボット研究会
九州大学名誉教授の橋爪誠氏を招いて初めての勉強会を開催

 2023年2月27日の15時より、医科器械会館3階特別会議室において日医工主催による第1回医療用・介護用ロボット研究会の勉強会が開催された。


テーマ
国内における手術支援ロボットの現状と
今後の展開

橋爪 誠 氏 北九州古賀病院院長/九州大学名誉教授

 臨床での専門は消化器外科ですが、九州大学で「先端医工学診療部」が設置されたのに伴って、工学系の研究者や企業の方々とロボット技術の開発、ロボット手術の臨床試験を継続的に行うようになりました。今後も、ロボット手術の分野で日本が世界をリードするために、微力ながらお役に立てることができたらと考えております。
 ロボット手術では「ダヴィンチ」のみの時代が長かったことはご存じの通りです。米国と日本における医療機器としてのロボット分野の違いは、医工連携や産学官連携に大きな開きがあることです。米国は人材と資金が非常に豊富であり、医療機器の承認までの期間が非常に短く、戦略的に行われます。