ホーム / 日医工ジャーナルダイジェスト

日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.45 No.405 2018.7-9 ダイジェスト

医工連携健康づくり、予防の市場は 医療機器業界が主導の可能性

富原 早夏氏
経済産業省 商務・サービスグループ
医療・福祉機器産業室 室長

 社会環境としては、日本を始めとする多くの国における医療費適正化ニーズや、人手不足に伴う医療職の負担軽減のニーズの高まり、少子高齢化に伴う疾患構造の変化などを中心に、今後の中長期的な社会の変化を見据えた新たなニーズが多く生まれつつあります。
 また、こうした新たなニーズを満たす可能性のある技術にも大きな変化が訪れています。あらゆる領域で、大量の情報を基に、自律的な最適化を可能とする第4次産業革命が進展しています。代表的なIoT、AI、ビッグデータ等のデジタル技術に加え、疾患発症リスクを特定・介入しうる遺伝子解析/編集技術や、医師の眼や手を支援しうるAR/VRやロボット技術、製造技術としても生体適合性の高い素材・材料や3次元プリンター技術、小型部品の製造技術等の革新的技術が次々と登場しております。
 それにより、新たなニーズに応え、新たな技術を用いた新たな医療の在り方が多く見られるようになっています。医療機器はそもそも個別に、あるいはシステムの一部として、データを収集し、分析し、つなぐ等の連携ができるものが多く、こうした変化を主導できる可能性が高いと考えます。昨年度、経済産業省では「我が国医療機器のイノベーションの加速化に関する研究会」を、それに併行してAMEDでは、「医療機器開発のあり方に関する検討委員会」を開催し、医療機器開発の重点領域を定めるべく、検討を進めています。
 その中で、こうした新たな医療の在り方について、「疾患の予防・早期発見」、「診断・治療の標準化・高度化」、「個別化医療の進展」、「患者負担の軽減(低侵襲化など)」、「遠隔・在宅医療への対応」、「ライフステージに応じた課題解決」、「医療の効率化」という7つのキーワードが提示されています。もちろんこの中には旧くて新しいものもありますが、私が特に注目しているのは「疾患の予防・早期発見」と「遠隔・在宅医療への対応」です。

医療情報医療機器メーカーとのマッチングを模索する「パルスウォータージェットメス」

荒船 龍彦氏
東京電機大学 理工学部工学系
先進生体医工学研究室 准教授

 ジェットメスは下垂体腫瘍のような繊細な手術に対応するために開発されました。実際に腫瘍を摘出する場合、特に脳外科手術においては繊細に手技できる治療器の方が生命予後の改善やQOLの維持に有効だと考えられています。
 水を使用したウォータージェットメスは1980年代から臨床応用されてきました。しかし、これは私たちのジェットメスとは別のものです。ウォータージェットメスは水流の照射により、熱損傷がなく高い組織選択性を有し、組織を切開、剥離、破砕する手術用治療機器です。ところが、この機器は低圧駆動の連続流を用いているために小型化に限界があり、ロボットや内視鏡、カテーテルなどの低侵襲機器への導入が容易ではありません。
 また、照射流量の多さから生じる安全性、操作性の問題点として、飛沫による播種や医療従事者の感染リスク/術野内での気泡発生や余剰水分による視野の悪化/微調整が必ずしも容易でない、などの理由により普及に至っていないのが現状です。
 こうした問題を解決するため、東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野の冨永悌二教授、小川欣一非常勤講師、中川敦寛特任准教授らが、1990年代後半から東北大学流体科学研究所、スパークリングフォトン社との医工連携で開発に着手しました。
 その結果、2001年に「レーザー誘起方式パルスジェット」の開発に成功しました。

安全管理医療機器の安全管理を考えるシンポジュウム
第3回 治療機器・施設関連機器に関する安全管理実態アンケート調査結果を発表

 医療機器センターと日医工では、これらの改正に対して医療現場がどのように取り組み、その実態はどのような状況であるかを把握するために平成22年と25年にアンケート調査を行った。それに続き、昨年29年、第3回目のアンケート調査を実施した。
 今回のシンポジュウムでは、平成29年度のアンケート調査やその他調査から見た、我が国における医療機器安全管理の現状を把握するとともに、医療機器に関する施策の動向、臨床現場における医療機器安全管理に対する取り組みの実際と課題、医療機器に関連する医療事故の現状、などをテーマに講演を行った。
 冒頭、主催者を代表して菊地眞医療機器センター理事長が開会挨拶を行った。平成19年以降、臨床工学技士がいる比較的大規模の医療機関では、急速に日常点検を含めた医療機器の安全管理が進んでいる一方、小規模で臨床工学技士などがいない医療機関は、医療法でやらなければならないことは承知しているが、実際にはできていない。安全管理のほとんどは医療機器メーカーにフォローしてもらっている状態であると菊地氏は説明し、「今後、それをどうするのかという段階に来ている」と述べた

社員総会日医工 2018年定時社員総会開催

 日医工の定時社員総会が2018年8月29日に都内ホテルメトロポリタンエドモントにて開催された。松本理事長より開会に先立って、以下の挨拶があった。
 1つ目は、来年10月に予定されている『消費税率のアップ』である。医療機関においてはコストアップによる負担増となる。その場合、取引の停滞、受注減につながると思われる。供給側においては、前回の税率アップ時に医療業界の業績が向上したことも踏まえ、駆け込み受注の戦略等を考える必要もあるのではないかと思う。消費税の対応については、医機連、厚生労働省においていろいろなやり取りがなされている。
 2つ目は、『メンテナンス』についてであるが、高度管理医療機器に多いと思うが、耐用年数を超えて使用するには、部品交換やメンテナンスをより充実させなければならないと考える。医療機器がより良い状況で使用されるには、保守点検が重要であり、定期契約を結び、安定した医療機器の運用を図っていくことであると考える。
 3つ目は、『開発の在り方』についてである。製品開発と市場開発を分けて考えていくのが必要と考える。製品開発では、AI、IoT等と言葉として使われているが、実際、人間の頭脳、感性、体感がAIとしてどの辺まで利活用できているのか、また費用対効果はどうなのかを考えていく必要がある。市場開発では、発展途上国での販売、生産に重きを置くことがこれからの激動の時代に考えていくことと思う。
 4つ目は、先般の行政との定期意見交換会において論点となった『UDI』についてである。医療製品の個体識別を利活用することにより医療の安全性向上や医療業務の効率化を図ることを目的としており、海外では既に法制化されていることを踏まえ、日本においても課題はあるがその方向に進んでいる。
 5つ目は、『企業倫理』についてである。難しい時代になればなるほど企業としての倫理観が求められる。会員企業の皆様には、企業人として節度を持って臨んでいただきたいと思う。