ホーム / 日医工ジャーナルダイジェスト

日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.47 No.416 2021.4-6 ダイジェスト

2021年度医機連みらい戦略会議シンポジウムをオンラインで開催
〜社会課題の解決への貢献、そしてコロナ禍から始まる医療機器のDX〜

 一般社団法人日本医療機器産業連合会(医機連)は4月26日、Web配信による「2021年度医機連みらい戦略会議シンポジウム」を開催した。事前登録者数は432名、実際の参加者は381名。参加内訳は会員企業および一般企業73%、行政11%、会員団体7%、残りがメディアおよびアカデミアであった。
 冒頭、医機連副会長で医機連みらい戦略会議の議長である渡部眞也氏が挨拶を行った。2019年に立ち上げたみらい戦略会議の進捗状況、今後の方向性を示した後、新型コロナウイルスについて次のように語った。「医療機器産業の立場から新型コロナウイルスに対し、さまざまな対応を進めています。治療法・診断法・検査機器の開発あるいは医療機器や部材の確保や増産。さらに、高度な医療機器を使うための体制づくりやトレーニング支援など、業界を挙げて取り組んでいくことを考えています」
 これに続き、行政、医療、臨床現場、メーカー、ベンチャー企業と各分野を代表する5人の演者が講演を行った。

WHO推奨医療機器要覧掲載の意義とメリット

安井 隆幸氏
大衛株式会社 企画開発本部


WHO推奨医療機器要覧とは
 2015年の国連総会においてUHC(Universal Health Coverage)の達成が掲げられました。UHCとは「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる状態」と定義されています。そんなUHCの取り組みの一つに「WHOの事前認証及び奨励の取得」、「途上国向けWHO推奨医療機器要覧(以下WHO推奨要覧)の作成」があります。WHO推奨要覧への掲載は、医療の国際展開を推進するに当たり有効な手段として考えられており、掲載製品の国際的な信頼の向上に寄与すると言われています。

WHO推奨要覧を知ったきっかけ
 WHO推奨要覧への掲載のきっかけを作ってくれたのは、大阪大学医学部消化器外科の中島清一先生です。先生とは7、8年前、大阪商工会議所が主催する企業展示がきっかけで知り合いました。それ以来、弊社は中島先生が主催する一般社団法人UHC機器開発協議会にも参加し、大阪大学とともにインドに出向いて全インド医科大学と人的交流、医療機器開発などに取り組んできました。私も二度ほどインドに伺ったことがあります。
 そんな中で開発されたのが、一人で着用できる医療用セルフガウンです。現地の医師の方にも試着していただき、新興国でも十分有意性を持って使用できることがわかりました。その流れの中で、中島先生は「WHO事前認証及び推奨の取得並びに途上国向けWHO推奨機器要覧掲載推進事業」というものがあるので、チャレンジしてみたらどうかと言ってくれたのです。中島先生は厚生労働省の方からも推進事業において何かいい商品はないだろうかと相談されていたようで、これを契機にWHO推奨要覧掲載のプロジェクトがスタートすることになりました。

国内における鋼製医療器械の現状と将来への展望 第2弾
鋼製医療器械とその作り手の存在をアピールすることの重要性

荒井 儫氏
日本鋼製医科器械同業組合 理事長/
株式会社荒井製作所 代表取締役
田中 一嘉氏
日本鋼製医科器械同業組合 副理事長/
株式会社田中医科器械製作所 代表取締役
金井 しのぶ氏
日本鋼製医科器械同業組合 広報担当/
株式会社マイステック 代表取締役

 

―前号において鋼製医療器械市場縮小の理由について、手術法の変化により鋼製医療器械からディスポーザブルに移行したこと、輸入品の台頭、そして鋼製医療器械の職人の人材確保の困難さなどが述べられました。荒井理事長はそれを聞いてどのようにお感じになりますか。
【荒井】市場の縮小と聞いて私に頭にまず浮かぶのは腹腔鏡下手術です。かなり昔、腹腔鏡手術が日本で行われる前のことですが、知人が腹腔鏡手術のための鋼製小物、鉗子などを作れないかと相談してきたのです。それを聞いた時は、本当に驚きましたね。話を聞いてみると腹に小さな穴を開けてその穴越しに手術するという。当時は想像もつきませんでした。
―日本で腹腔鏡手術が初めて行われたのは、1990年です。それ以前ということになりますね。
【荒井】初めて聞いた時、そんなことは不可能だと思っていましたが、それができてしまった。今では腹腔鏡を始め内視鏡手術が主流です。とにかく、鋼製医療器械衰退のきっかけの1つとなったのは腹腔鏡だと感じています。
―相談してきた人は医療機器関係の方ですか。
【荒井】安価な聴診器をトルコに輸出するなど医療機器関係の仕事をしていたようです。共通の知り合いが「そういう鉗子なら荒井さんに相談すれば何とかしてくれる」と、私を紹介したらしい。試しに求められた仕様で作ってみました。真っすぐ一直線の長い鉗子です。
―さらに、輸入品の台頭が国内の鋼製医療器械に影響を与えた。
【荒井】輸入品が入ってきて国内品が押されるようになりました。初期の頃、私も輸入品を見てみましたが、ネジの作りが良くなかった。しかし、輸入品でもドイツ製は優秀です。ただ、修理代が高い。鋼製医療器械は大量に売れるものではないから仕方ないと思いますが。

医療機器業界で活躍する女性達 第4回
製品開発業務を通じて患者さんに製品を届ける喜びを感じる

佐伯 文氏
エドワーズライフサイエンス株式会社
製品開発本部 本部長


―会社ではどのような業務をされているのでしょうか。
【佐伯】日本の製品開発本部は、Japan and Asia Pacific(JAPAC)のRACAの組織に所属しており、私は製品開発本部の本部長を務めております。弊社は米国に本社があり、海外で開発した製品を日本に輸入して販売しています。臨床試験成績を添付して申請する製品を多く扱っていますので、製造販売後調査(PMS)等が課される場合もあり、その仕事も製品開発本部で行います。製品開発からPMSまでを一貫して行う、それが製品開発本部の仕事です。
 製品開発本部は「薬事部門」、「治験やPMSを行う臨床開発関係部門」、「薬事臨床戦略部門」に分かれています。
―クラスⅢ以上の製品を多く扱っておられますが、具体的な内容を教えてください。
【佐伯】弊社で取り扱っている製品は、大きく「心臓弁膜症等の構造的心疾患の治療」と「手術中の循環(血行)動態のモニタリング」に分けられます。弊社の製品には、革新的な医療機器が多いため、薬事申請では多くの試験成績が求められます。またPMSが求められる製品も多い印象があります。弊社の生体弁は牛の心膜が原材料ですので、安全性を証明するための不活化情報も併せて申請しています。
 また、弊社は「TAVI」(経カテーテル大動脈弁治療)も取り扱っていますが、この製品の申請では国内で臨床試験を行う場合もあります。国内での治験実施の場合、プロジェクトマネージメント、モニタリングチームをはじめとして多くの方たちが加わることになり、通常の医療機器承認申請に比べると段違いに人手も費用もかかります。