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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.48 No.419 2022.2-3 ダイジェスト

日本が提案した高頻度振動人工呼吸器(HFO方式)が
ISO国際標準化規格に登録
株式会社メトラン 代表取締役副会長の中根伸一氏に聞く

 日医工会員企業の株式会社メトランが開発した高頻度振動(High Frequency Oscillation、以下「HFO」)人工呼吸器が、2021年にISO国際標準化規格として登録され、新しい規格が発行された。日本が開発した医療機器、特に治療機器においてISOに新規格として登録されるのは極めて稀なケースである。
 国内で医療機器のISO国際標準化規格を司っている民間組織は、日医工の「ISO/TC121国内委員会」(委員長:大村昭人帝京大学医学部名誉教授)である。2015年の小誌の取材において大村委員長は、「ISO/TC121国内委員会が担当している分野はほとんどが治療機器であり、この分野は圧倒的に米国やヨーロッパ勢が優勢なのが現状です。数年前まで日本はISOで定められた国際規格に適合しようという姿勢にとどまり、受け身に回りがちでした。これからはもっと積極的に意見を言っていこうという姿勢に変わりました」と語っている。HFO人工呼吸器の国際標準化をISO専門組織に提案したのは2016年のこと。取材時点は提案に向けて様々な検討が行われていた時期だったと思われる。


超低出生体重児の高い生存率

 低出生体重児にダメージを与えないためには、一度に大量の空気を呼吸器に送り込むCMV方式よりも高頻度に換気するHFO方式の方が格段に安全性は高い。これは振動を増やして細かく空気を送り、低出生体重児の肺の負担を軽減するためである。CMV方式では1分間で30回ほどの振動だが、HFO方式では30倍の900回の振動となる。
 高齢出産などにより早産の頻度が増え、それに伴い「超低出生体重児」の出生率が高くなった。しかし、HFO人工呼吸器が呼吸管理の標準となった日本は低出生体重児医療に関する技術が世界トップ水準で、出生体重が500g~600g未満の超低出生体重児の生存率は約80%となっている。

日医工ジャーナル・単回医療機器再製造推進協議会 共同企画
国内におけるR-SUDの現状と将来への展望(後編)

野中 寿太郎氏
日本ストライカー株式会社 サステイナビリティソリューションズ カントリーマネジャー
江嶋 敦氏
株式会社ホギメディカル 学術部
及川 信一氏
ディーブイエックス株式会社 営業推進部 営業推進課長
青木 正人氏
ディーブイエックス株式会社 営業推進部 担当課長

 

−−−2021年9月に環境省と厚生労働省の連名で通知が出たのは画期的でした。「単回使用の医療機器の再製造等に当たっては、薬機法の関連法令が廃棄物の処理及び清掃に関する法律に優先して適用される」との内容でした。これまでは使用済み医療機器の収集への対応が自治体によってまちまちでしたが、あの通知によって解決された。このことに関してどのように思われますか。

【及川】もっと早ければという感じです。収集については当初よりストライカーさんから説明を聞いており、厚生労働省からも「収集を進めてください」との話であったそうです。ただ、同省からの通知が無かったために実際に病院に行くと「よくわからないから保健所に行って聞いてほしい」と言われることがあり、保健所に行くと、有価物かどうかこちらで決めるということでいくつかの要件を提出するよう指示されました。内容的に弊社から出せないものもあったため、自治体によっては止まってしまったケースがあります。
【野中】R-SUDは新しい取り組みです。新しい取り組みのための仕組みや関係各所の認知が間に合っていなかったのだと思います。

−−−収集には地域差があるとのことですが、江嶋様どうでしたか。

【江嶋】弊社の場合、保健所ではなく、自治体の廃棄物担当部署に直接確認しました。我々は「今回R-SUDという医療機器の再製造を行うので、医療機関から使用済みの医療機器を収集し始めます。病院の場合、通常は感染性廃棄物として処理されていますが、これは原材料となる物なので扱いが違います」と説明したのです。担当者は医療機器自体を知らないし、物だけ見ても通常の廃棄物とどう違うのかわかりません。ある自治体では通知も出ていないので判断ができないと言われました。自治体のほとんどは「厚生労働省で行っているのであれば問題ないだろう」と通してくれたのですが、いくつかの自治体は話が止まってしまったのです。そのことを後日、厚生労働省の担当の方にお話しして、環境省につないでいただきました。厚生労働省、環境省、弊社の3者での話し合いの末、環境省に理解していただきました。ただ、最終判断は自治体窓口が行うので、と言われましたが。

新しい考えが導入された電磁両立性規格改正に伴う新規格への移行
2023年3月1日以降製造販売の医療機器が対象に

平野 知氏
日医工EMC・安全委員会 委員長


 2004年、医療機器の「電磁両立性規格」が法制化され、以後、何度かの規格改正が行われた。しかし、2018年に改正された「JIS T 0601-1-2:2018」(以下「新規格」)は従来の規格と異なる新しい考え方が導入されている。その内容についてEMC・安全委員会の平野知委員長に解説していただいた。


 新規格の通知は2018年3月1日に出された薬生機審0301第1号です。2023年3月1日以降に製造販売する医療機器は全て新規格に対応しなければなりません。現在は経過措置期間中にあり、2023年2月28日までは「JIS T 0601-1-2:2012」(以下「旧規格」)での製造販売は可能です。しかし、3月1日以降は不可能ですので、経過措置期間中に必ず新規格への対応をお願いします。対象となるのは管理医療機器、高度管理医療機器、一般医療機器です。
 新規格への適合確認については「新規格の試験を全て実施する」、「旧規格との差分を判断し試験する」、「リスク分析を行い追加試験の必要性を判断する」などがあります。新規格へ何らかの対応を行って製造販売を継続する場合には、承認、認証、届出に関するそれぞれの対応が必要となるので注意してください。


ポイントは「電磁環境に関するリスクマネジメント」

 新規格の目的は「ME機器/システムの電磁妨害に関する基礎安全及び基本性能、並びに電磁エミッションに対する一般要求事項及び試験について規定」することにあります。旧規格と新規格の異なる主な点は、①医療機器の使用環境別のイミュニティ規定、②電磁環境に関するリスクマネジメントの採用、③ポートごとのイミュニティ試験、④試験レベルの増加、⑤新しい試験の追加(RF無線通信機器からの近接電磁界試験)、⑥試験計画書の作成、⑦附属文書及び表示の変更、などです。

 ポイントの中心となるのは②の「電磁環境に関するリスクマネジメント」です。ここに旧規格と異なる新しい考え方が示されました。具体的には、携帯電話や無線LANなど一般機器が出す電磁波の影響の“リスク”が現在は不可避になっているため、医療機器との干渉問題を考慮する内容が盛り込まれています。これは一般機器が医療機器に近接する機会が多くなっただけでなく、医療機器の行動範囲が広がったことも大きな理由です。

シリーズ 医療機器業界で活躍する女性達 第7回
子育てと仕事の両立は互いの理解と尊重があってこそ

柴田 亜弥子さん
パラマウントベッド株式会社
さいたま支店 マネージャー


−−−現在、どのような職務に就いていらっしゃいますか。

【柴田】さいたま支店で「介護・健康事業課」のマネージャーです。そのなかでも、健康事業の責任者を務めております。パラマウントベッドの健康事業、まだ耳慣れない言葉だと思いますが、医療分野や介護分野に次いで第三の柱として立ち上げられた分野です。
 弊社は1947年に病院用ベッドの専業メーカーとして創業、その後の高齢化の進展を背景に高齢者施設や在宅介護分野にも事業領域を拡大してきました。近年、以前から行っていた一般コンシューマー向け事業の拡大、本格化が進み、2020年に「健康事業推進部」が設置されました。
 弊社は2009年に研究機関「パラマウントベッド睡眠研究所」を設立し、睡眠に関するさまざまな研究に取り組んでいます。日本人は海外の人達に比べ、睡眠が不足していると言われており、睡眠の質が問題とされてきました。当然、睡眠の質は健康の質に直結します。健康である段階から睡眠の質を維持、あるいは向上しようというのが健康事業のスタートのきっかけでした
 そうした研究の中で登場したのが「Active Sleep Bed」です。「寝室環境の最適化を通じて健康で生き生きとした暮らしづくりをサポートする」をテーマに、医療・介護用ベッドの技術を活かして開発されました。非接触、非装着のセンサーで寝ている方の睡眠の状況を把握し、自分に適した入眠角度が設定できる、ベストのタイミングでベッドの背が動き起床できるなど、これまでの概念を超えたベッドとなっています。ベッド一筋に活動してきた弊社ならではの製品と自負しています。