2004年、医療機器の「電磁両立性規格」が法制化され、以後、何度かの規格改正が行われた。しかし、2018年に改正された「JIS T 0601-1-2:2018」(以下「新規格」)は従来の規格と異なる新しい考え方が導入されている。その内容についてEMC・安全委員会の平野知委員長に解説していただいた。
新規格の通知は2018年3月1日に出された薬生機審0301第1号です。2023年3月1日以降に製造販売する医療機器は全て新規格に対応しなければなりません。現在は経過措置期間中にあり、2023年2月28日までは「JIS T 0601-1-2:2012」(以下「旧規格」)での製造販売は可能です。しかし、3月1日以降は不可能ですので、経過措置期間中に必ず新規格への対応をお願いします。対象となるのは管理医療機器、高度管理医療機器、一般医療機器です。
新規格への適合確認については「新規格の試験を全て実施する」、「旧規格との差分を判断し試験する」、「リスク分析を行い追加試験の必要性を判断する」などがあります。新規格へ何らかの対応を行って製造販売を継続する場合には、承認、認証、届出に関するそれぞれの対応が必要となるので注意してください。
ポイントは「電磁環境に関するリスクマネジメント」
新規格の目的は「ME機器/システムの電磁妨害に関する基礎安全及び基本性能、並びに電磁エミッションに対する一般要求事項及び試験について規定」することにあります。旧規格と新規格の異なる主な点は、①医療機器の使用環境別のイミュニティ規定、②電磁環境に関するリスクマネジメントの採用、③ポートごとのイミュニティ試験、④試験レベルの増加、⑤新しい試験の追加(RF無線通信機器からの近接電磁界試験)、⑥試験計画書の作成、⑦附属文書及び表示の変更、などです。
ポイントの中心となるのは②の「電磁環境に関するリスクマネジメント」です。ここに旧規格と異なる新しい考え方が示されました。具体的には、携帯電話や無線LANなど一般機器が出す電磁波の影響の“リスク”が現在は不可避になっているため、医療機器との干渉問題を考慮する内容が盛り込まれています。これは一般機器が医療機器に近接する機会が多くなっただけでなく、医療機器の行動範囲が広がったことも大きな理由です。