日医工ジャーナル ダイジェスト
Vol.50 No.425 2023.7-9 ダイジェスト
医療機器のサイバーセキュリティ対応を
どのように捉えるべきか考える
〜IMDRFガイダンスの内容と日本版手引書について〜
西川 玄希 氏
厚生労働省 医薬局 医療機器審査管理課
プログラム医療機器審査管理室 医療機器審査調整官
医療機器に対するサイバー攻撃への国際的な対策が必要
医療機器がサイバー攻撃の対象になることは十分に想定されます。医療機器がサイバー攻撃を受けた場合、医療機器の停止や誤動作につながるおそれがあり、例えば人工呼吸器のような治療機器は患者さんの生命に重篤な影響を発生させ、検査機器であれば誤った治療に至る可能性が出てきます。医療機器へのサイバー攻撃に対して、医療従事者や患者さんの安全な状態が確保されるよう、2015年7月に「医療機器のサイバーセキュリティについて」を発出しました。医薬品医療機器等法に従ってサイバーセキュリティ対応がなされるよう、サイバー攻撃への対応方針が周知された訳です。
その後、国際的な取り組みとして、日本を含む規制当局関係者が参画した国際医療機器規制当局フォーラム(以下 IMDRF)において、「医療機器サイバーセキュリティの原則及び実践(以下IMDRFガイダンス)」が2020年4月に公表されました。
IMDRFガイダンスは、医療機器に関するサイバーセキュリティ対策の一般原則とベストプラクティスを整理した国際的な指導書となります。各国の規制当局が行っていたサイバーセキュリティへの対応を取りまとめたものであり、どのような考えでサイバーセキュリティを行うべきか、具体的にどのように対応するべきかといった情報を、医療機器を取り扱う関係者に提供するというスタンスで作られています。IMDRFが取りまとめた医療機器のサイバーセキュリティに関するガイダンスとしては初めてのものでした。
日医工/OMETA共催「日本/中国の医療状況の意見交換会」
日本側、医療機器分野における『中国製造2025』の懸念伝える
■中国側出席者(順不同)
劉 志貴 氏(中国亜州経済発展協会 常務副会長/医養結合産業委員会 会長)
宋 虎杰 氏(陕西省中医药大学附属西安脳病院 病院長)
王 宏才 氏(中国亜州経済発展協会 医養結合産業委員会 執行会長)
劉 桂蓮 氏(北京市房山老年病院 看護部長)
■日本側出席者(順不同)
松本 謙一 氏(日本医療機器工業会 理事長/海外医療機器技術協力会 会長)
東 竜一郎 氏(サクラ精機株式会社 代表取締役社長)
間嶋 恒吾 氏(サクラ精機株式会社 国際事業部)
松本 滉太 氏(サクラ精機株式会社 業務本部)
堀内 良啓 氏(サクラファインテックジャパン株式会社 国際事業部)
伊崎 一志 氏(山田医療照明株式会社 営業部)
矢野 守 氏(海外医療機器技術協力会 専務理事)
穴田 輝彦 氏(日本医療機器工業会 専務理事)
2023年6月29日、日医工と海外医療機器技術協力会(OMETA)共催による「日本/中国の医療状況の意見交換会」がパシフィコ横浜会議室で開催された。これは中国の医療関係者の来日に合わせて行われたもので、中国の医療機器開発の現状と特徴、中国医療機器市場の状況、病院および医療技術の現状等について話し合われた。
日中の意見交換会は、松本謙一日医工理事長/OMETA会長の挨拶から始められた。
「日本医療機器工業会が今回の意見交換会の主催団体に選ばれたのは、2022年1月に当工業会と中国亜州経済発展協会、中国国家発展改革委員会国際合作中心の2団体との間で、医療ヘルスケア分野における新たな国際協力のモデルを検討し合ったからです。日中企業間の実務協力を積極的に推進し、日中両国の経済交流に貢献することを目的に覚書が交わされました。この覚書実現のため、今回は横浜で開催されている『第98回日本医療機器学会大会』に合わせて中国側から4人の先生に来日していただきました。
昨今、医療機器分野において『中国製造2025』という言葉をよく耳にします。中国の産業政策が医療機器でどのように行われるのか、日本企業は非常に懸念しています。この政策が国公立病院に対してだけの適用なのか、民営も含め全病院が対象となるのか、その辺のことを中国側の先生方に触れていただけたら幸いです。
また、中国の医療機器市場の話が出てくると思います。2023年の中国の市場規模は日本円に換算すると約28兆円、2年後の2025年には36兆円に達するとも言われています。本日は勉強の場として、大いに本会合を活用したいと思います」
レポート/第2回医療用・介護用ロボット研究会
介護用ロボットの現状と今後の展望
伊関 洋 氏
社会医療法人 至仁会 介護老人保健施設 遊 施設長
医工連携は何故、うまく行かないか?
医療・介護におけるロボット技術の研究は医工連携の重要なテーマの1つです。しかし、数多くの医工連携事業が行われているにも関わらず、成功している事例は少ないのが現状でしょう。私はその原因を「お互いがお互いを必要としているInterdependentな関係にない」からと考えました。その関係にならなければお互いを理解し、尊重し、相互作用しながら研究開発を進めることはできません。
しかし、医師と技術者がInterdependentな関係になることは非常に難しい。その要因として「医師は医学しか知らず、技術者は工学しか知らず、共通言語がない」、「お互いに複眼的思考を持たず相手を理解できない」、「医師は将来の顧客、技術者は将来の納入者という立場の違い」といったことが指摘されてきました。
研究開発にはトップダウン型とフロントランナー型があります。トップダウン型は明確なニーズとゴールがあり、技術的サポートがあれば成功する率が高い。このやり方だとInterdependentな関係でなくても実施可能ですが、往々にして二番煎じのものしか開発できません。一方、フロントランナー型は明確な目的があるが、目的に対する評価も定まっておらず、どのような技術が必要かなども大雑把にしか決まっていない。進めながら目標や技術を調整して、出口まで進めて行くという方法です。時間もコストもかかりますが、オリジナルなものを生み出す可能性が高い。私はかつてこの方法で脳神経外科の手術用ロボットを開発したことがありました。
医工連携の必要3要件は、スピード、低ランニングコスト、アウトプットです。医療・介護ロボットの開発は、現在でも非常に難度の高い事業といえるでしょう。
医療を学ぶために英国へ移住、
それがその後の人生に大きな影響を与えました
Ivan Mbogo(アイバン・ンボゴ)さん
シスメックス株式会社
HUP事業本部 ヘマトロジー事業推進部 博士(学術)
−−−アイバンさんは現在どのような仕事に就いているのでしょうか。
2022年4月にシスメックスに入社して事業推進部門に配属されました。ヘマトロジー事業推進チームの一員として、フローサイトメトリーによるマラリア診断装置の推進に携わっています。主にRHQ(Regional Headquarters:地域統括会社)や研究開発部門とのコミュニケーション、市場調査などを行っています。
−−−どのような理由で医療分野に進もうと思ったのですか。
私は幼い頃、よくマラリアに罹りました。また、母と姉は看護師でしたので、医療を身近に感じていたこともあったと思います。元々、科学が大好きでしたから、小学校の頃から将来は医師か研究者になりたいと考えていました。
ウガンダの高校を卒業後、英国に移住、2010年にスコットランドのアバディーン大学医科学研究所に入学して生理学を専攻しました。2015年には沖縄科学技術大学院大学に入学、発生生物学を専攻し、β-カテニンの研究で博士号を取得します。沖縄科学技術大学院大学は授業が全て英語で行われ、5年間の博士課程、リサーチ・インターンシップを提供するというユニークな大学でした。沖縄の雰囲気は何となくウガンダに似ており、生活にも馴染んであっという間に5年が過ぎました。
−−−現在の会社に入社したきっかけを教えてください。
卒業を前にして、私は研究者の活動をどのようにして続けられるか考えました。とりあえず日本で働くと決め、就職のために大手製薬企業を回りました。しかし、就職はなかなか決まりませんでした。日本語というハードルが高かったからです。日常会話は話すことができましたが、当時の私の日本語力では専門用語を理解することが難しかったのです。
そんな中でシスメックスと出会います。グローバル企業だったシスメックスは入社面接を英語で行ってくれました。私が何よりも気に入ったのはマラリアが対象分野になっていたことです。幼い頃からマラリアに苦しんだ私はこの病気に興味を持っていました。マラリア研究を行っているシスメックスに出会うことができたのは非常に幸運だったと考えています。
ジャーナルダイジェスト一覧
- No. 428 2024.4-6
- No. 427 2024.2-3
- No. 426 2023.10-2024.1
- No. 425 2023.7-9
- No. 424 2023.4-6
- No. 423 2023.2-3
- No. 422 2022.10-2023.1
- No. 421 2022.7-9
- No. 420 2022.4-6
- No. 419 2022.2-3
- No. 418 2021.10-2022.1
- No. 417 2021.7-9
- No. 416 2021.4-6
- No. 415 2021.2-3
- No. 414 2020.10-2021.1
- No. 413 2020.7-9
- No. 412 2020.4-6
- No. 411 2020.2-3
- No. 410 2019.10-2020.1
- No. 409 2019.7-9
- No. 408 2019.4-6
- No. 407 2019.2-3
- No. 406 2018.10-2019.1
- No. 405 2018.7-9
- No. 404 2018.4-6
- No. 403 2018.2-3
- No. 402 2017.10-2018.1
- No. 401 2017.7-9
- No. 400 2017.5-6
- No. 399 2017.2-4
- No. 398 2016.9-2017.1
- No. 397 2016.5-8
- No. 396 2016.2-4
- No. 395 2015.10-2016.1
- No. 394 2015.7-9
- No. 393 2015.4-6
- No. 392 2015.2-3
- No. 391 2014.10-2015.1
- No. 390 2014.7-9
- No. 389 2014.5-6
- No. 388 2014.3-4
- No. 387 2013.10-2014.2
- No. 386 2013.7-9
- No. 385 2013.5-6
- No. 384 2013.2-4
- No. 383 2012.10-2013.1
- No. 382 2012.7-9
- No. 381 2012.4-6