日医工ジャーナル ダイジェスト
Vol.40 No.389 2014.5-6 ダイジェスト
対談日本の医療機器開発の実情と課題
生体吸収性ステントの開発をめぐって
妙中 義之 氏国立循環器病研究センター研究所
副所長
伊垣 敬二 氏株式会社 京都医療設計
代表取締役 工学博士
【伊垣】 世界で初めて生体吸収性ステントを学会で発表したのは、米国デューク大学の医師Richard・Stack氏です。Stack氏は1990年、ポリ–L–乳酸製のステントを開発して犬の動脈に6〜8本程度のステントを入れた動物実験を行い、良好な試験結果を出していました。海外の学会でそれを聴いた滋賀県立成人病センターの副センター長、玉井秀男先生(故人。2009年逝去)はその報告に非常に啓発され、帰国後、私に会いに来たのです。「体内で溶けるポリ–L–乳酸製のステントを一緒に作りませんか。現在は動物実験の段階だが、ぜひ臨床試験に持っていきたい。」と相談を受けました。それがきっかけです。
ーー玉井先生にご相談を受けた時に、初めて生体吸収性ステントのことをお知りになったのですか。
【伊垣】 いいえ、それ以前に、医学専門メディアの記事でStack氏の研究を読んでいましたので知ってはいました。当社は生体吸収性縫合補強材の国内総代理店をやっていましたので、非常に興味深い記事でした。ただ、開発の相談が私の会社に持ち込まれるとは思いも寄らなかったというのが正直なところです。が、直感的にコンセプトは面白いと思いましたね。それ以降、玉井先生との二人三脚が始まったのですが、まず行ったのがStack氏の講演を追いかけること。1年ぐらい続けましたか。その中で私たち2人はますます生体吸収性ステントへの熱望が高まっていきましたが、Stack氏は反対に熱が冷めていくようになったように思えました。なかなか製品化には結びつかないのが理由だったようです。
ーー玉井先生の二人三脚で全く未知の製品開発が始まった。まずはプロトタイプを試作し、それを動物実験することから始めたわけですね。
【伊垣】 初めは単なる興味だけでした。単純に「作ってみるか」と思っただけで、今、こんなに注目されるとは考えてもみなかったし、ここまで市場が大きくなると想像もしていませんでした。ただ、ちょっとしたアテというか見通しはありました。金属製ステントは、ステンレススチールやコバルト合金などの金属の紐を網目状に織ったものを円筒状に加工したものです。この繊維が溶けて生体に吸収されるものにするなら「生分解性ポリマー」が使えるかもしれない。私は、国立京都工芸繊維大学で繊維工学を学びましたから、その視点で考えれば、そういう想像が容易にできました。 それでまず、Stack氏が製品化に至らなかったのは、原材料をポリ乳酸にしているからだと判断し、開発スタートはポリグリコール酸(PGA)を使用してみました。
イベント医療用機器・要素部品パビリオンは新らしい局面に
2014年6月12日から14日にかけて、新潟市の朱鷺メッセ展示ホールにてメディカルショージャパン&ビジネスエキスポ2014と併設で「医療用機能・要素部品パビリオン」が開催された。4年目を迎えた今回は東北6県に新潟県、長野県、神奈川県、静岡県が加わり、これまでになく盛大に行われた。出展者数は66件、パビリオンの広さも過去最大のものでメディカルショーの展示会場全体のほぼ3割を占める規模であった。
メディカルショーの展示会に参加した医療機器メーカーは、新潟県開催が初めてということもあって入場者数がどの程度入るか予想がつけにくかったらしく、 展示装飾のレベルにもバラツキが見られた。 大きなブースで華やかに展示している企業と備え付けの基礎小間の展示で行っている企業との差がこれまでになく大きい。 しかしながら、医療用機能・要素部品パビリオンが大きな面積を占めたことで展示会場が無駄に大きく感じられず、 締まった空間を創り出していたのでかえって功を奏した感はあった。 これまでのメディカルショーの中ではパビリオンがこれほどの存在感を示したことはなかった。 パビリオン内部には事業相談コーナーと薬事相談コーナーが設けられ、より一層事業的な展開を意識したものとなった。
法律・規格・基準を担当する工業会の”頭脳”法規関連委員会
法規関連委員会は政策部会の中に置かれている。活動内容としては以下の通りだ。①規制法令に対する業界意見のとりまとめや運用改善に向けた行政へのはたらきかけ、②法制度に関する周知教育や、情報提供のための講習会の企画・開催、③認証基準の策定やJIS原案の作成等に関する対応など。法規関連委員会という名称となったのは平成24年(2012年)4月。ルーツは「薬事関連対応連絡委員会」という委員会だ。発足は平成16年(2004年)、当時のことを飯田氏が「発足のきっかけは、平成17年(2005年)に施行が予定されていた薬事法改正への対応でした」と回顧する。 周知の通り、平成17年4月に施行された薬事法改正は、医療機器業界にとってエポックメーキングな出来事だった。従来の「医療用具」の名称が「医療機器」に変更されたのもこの改正から。なによりも「医療機器の特性に応じた安全対策の見直し」として、リスクに応じた医療機器のクラス分類制度、低リスクの医療機器に係る第三者認証制度が新設。それまで製造業と輸入販売業という分類が、「製造販売業」と「製造業」に変更されたのもこの改正からだった。
安全セミナーの積極的開催と学会・行政との連携が活動の2本柱 人工呼吸委員会
人工呼吸委員会は安全部会に属し、麻酔機器委員会、手術用メス委員会とその活動目的を同じくする。「会員企業の取り扱う主要医療機器に関する技術的経験知識を核として、法規制や国内外規格・基準への対応においては他の関係委員会に協力し」、 「使用者に対して安全セミナー等の機会を通じて医療機器の適正使用を普及」するというものだ。
「人工呼吸委員会に関しては、人工呼吸器の適正かつ安全な使用方法を啓発することが最大の目的です。 それを企業ごとに行っている例もありますが、当工業会として行うことでより広範囲、より効果的に行えると考えています」と長井氏が説明する。 その最大の活動内容が人工呼吸の安全セミナーである。セミナーは1987年、第1回を新潟で開催して以来、ほぼ毎年開催し、昨年の福島まで計21回を数える。 第1回から第15回(静岡県)まで共通して冠されたセミナーのメインタイトルは『人工呼吸器を安全に使用していただくために』、 第16回から第21回までのタイトルは『人工呼吸器等の基本的知識習得のために』。目的はこれに集約されている、と長井氏は語る。
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