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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.48 No.417 2021.7-9 ダイジェスト

薬機法上の許可業者の法令遵守体制と医療機器における広告規制

堀尾 貴将氏
森・濱田松本法律事務所


―今回は薬機法上の許可業者の法令遵守体制と広告規制についてお聞きしたいと思います。まず、法令遵守に関する改正の背景、経緯について教えていただけますか。
【堀尾】今回の改正は、平成25年の改正時から5年間の施行状況を踏まえ、必要な見直しを行うという形で行われました。この5年間で様々な薬機法違反が発生しており、国あるいは都道府県などで行政処分が行われています。こうした行政処分事案について、改めて原因分析をしたところ、「違法行為について経営陣が知りながら行っているもの」、「適切に管理、監督する体制が確立していないために違法行為を発見、改善できなかったもの」と、大きく2つの類型があることがわかりました。こうした違法行為が繰り返されないための方策として、許可業者に対して法令遵守体制の整備を求めるという改正がされることになったのです。
―厚生労働省は仕組み作りについてのテンプレートは示さないと発表しています。企業としては基本的にどのような考え方を持ったらいいのでしょうか。
【堀尾】そもそも法令遵守体制はテンプレート化することに馴染みません。特に医療機器は製品が多種多様ですし、診療科によって使い方も変わってきます。また医療機器のクラスによっても考え方が異なりえます。そのような状況の中、これをやれば法令遵守体制として十分である、というテンプレートは作りようがありません。むしろ、自社の企業活動を見直して検討項目を洗い出し、それを分析してリスクが高い部分を中心に、法令違反が生じないための体制を構築する、そうしたオーダーメイドの考え方をしなければならない。行政が指定する何らかの社内規程を設けることや、何らかの組織を社内に置くことをすればそれで十分である、という話ではないのです。

公正競争規約・企業倫理勉強会講演Ⅱ
「独占禁止法と国家公務員倫理法」について

関尾 順市氏
医療機器業公正取引協議会 専務理事


―独占禁止法「課徴金制度」の改正内容とは
 今回ご紹介するのは1つ目が「独占禁止法の改正」について、2つ目が「国家公務員倫理法」、特に「みなし公務員」についてです。
 令和元年6月19日に独占禁止法の改正法が成立、昨年令和2年12月25日に施行されました。内容としては「課徴金制度」の改正で、課徴金とは「金銭的不利益」のことを意味します。
 これはいわゆる独占禁止法違反の中で、価格カルテル・入札談合を行った違反行為について、その事業者に課徴金、金銭的不利益を課すという制度ですが、これが導入されたのが昭和52年でした。40年以上経っており、その間にいろいろと不具合が出てきました。違反行為に対して課徴金を課すことができなかったケースが出てきたのです。そうしたことから課徴金制度に関する法改正が行われました。
 そのケースの1つがこの平成29年12月5日付の日本経済新聞の記事で報道されました。鳥インフルエンザで使用された全身白ずくめの感染防護服をご存じだと思いますが、東京都が発注した感染防護服の入札談合事件です。談合した事業者と落札した事業者が別であったことから、談合した者は売り上げがないという理由で違反にも関わらず課徴金を課すことができなかったものです。
 改正内容は大きく2つあります。1つ目が「課徴金の算定方法の見直し」、2つ目が「調査協力減免制度の改正」です。

国内における鋼製医療器械の現状と将来への展望 第3弾
鋼製医療器械職人のインキュベーション事業に取り組む

金井 しのぶ氏
日本鋼製医科器械同業組合 広報担当
株式会社マイステック 代表取締役


 国内の鋼製医療機器市場縮小の理由については、これまでに「術式の変化」「輸入品の台頭」「後継者の不足」などが述べられました。中でも後継者不足は深刻で、ベテランの職人さんの年齢が70〜80代ですので、すぐにでも取り組まなければいけない問題と考えました。そこで、鋼製医療機器業界の現状を踏まえ、課題点を整理して「鋼製医療器械職人のインキュベーション事業計画」を立案しました。現在、日本鋼製医科器械同業組合の荒井理事長と相談しながら、具体的な活動に入ろうとしているところです。今回は、この事業計画の内容についてお話ししたいと思います。

インキュベーション事業の背景として考えなければならないこと
 日本製の手術用鋼製医療器械の特徴は、手による仕上げ技術の良さにあります。切れ味が良いということは治癒の短期化につながりますし、手に馴染むということは術者に感触が伝わることにつながります。よく「調子が良い」ということも言われますが、これは術者に疲労低減をもたらします。実際、日本全国の外科医師の先生方からお褒めの言葉をいただいており、これを糧に職人さん達は日々仕事に励んでいます。
 しかし、ここ20年の間に「職人さんや後継者の不足」などが表面化してきました。その原因としては「職人育成の体制が整えられていない」「社会に向けてのアピールが不足している」などが考えられます。さらに人材の問題に関しては、職業として成り立つという根本的な問題があり、それを解決するには「市場開拓(需要喚起)」、「生産性向上」なども並行して考えなければなりませんでした。

コロナ禍におけるECMO、人工呼吸器の貢献と将来への課題

竹田 晋浩氏
医療法人社団康幸会 かわぐち心臓呼吸器病院
NPO法人 日本ECMOnet理事長


―COVID-19の感染拡大から1年半を過ぎようとしています。先生はどの段階で感染拡大の重大さをお感じになりましたか。
【竹田】感染拡大の重大さは昨年の1月初旬、中国武漢の報告から一週間後くらいに感じました。1月中旬にはほぼ確信に至って、ECMOnetの組織づくりを開始しました。
―かなり早い時期ですね。
【竹田】そうですね。準備を開始してから、実際にECMOnetに協力してくれる人材の募集、連絡体制の準備、活動についてのシステム作りなどを行って2月16日には活動スタートとなりました。
―ECMOの治療効果も予測されていたということでしょうか。
【竹田】ECMOの治療効果については2009年の新型インフルエンザの流行時にわかっていました。2012年に確認されたMERS(中東呼吸器症候群)も同様です。ウイルス性疾患に関するECMOの治療効果はとても高かった。サウジアラビアにおけるMERSの致死率は34%だったのですが、人工呼吸のみの治療では全ての患者さんが死に至りました。しかし、ECMOで治療すると重症患者でも約40%は救命ができたのです。現在MERSに関しては、まず人工呼吸で治療を行い、1〜2日で回復傾向になったらECMOに移行するという治療方針になっています。
 昨年の1月時点では新型コロナウイルス感染症についての状況が分かりませんでしたが、ウイルス性の呼吸不全ということでしたので、ECMO治療によってある程度患者さんを助けられるだろうと考えました。