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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.47 No.413 2020.7-9 ダイジェスト

オンラインによるイベント開催の実際と将来の展望

川越 満氏
木村情報技術株式会社
コンサナリスト®事業部 事業部長

 創業者の木村隆夫は製薬会社のMRとして18年間勤務、うち15年間は大学病院の専属担当者として講演会やセミナーの企画などのコーディネートを手掛けました。この経験を活かし、2005年にWeb講演会の運営・配信を行う木村情報技術株式会社を設立しました。北京で中国企業の自社開発コンピュータによる双方向テレビ会議システムを見たのがきっかけです。これを医療・医薬品業界で活かせないかと思い立ち、カンファレンス向けのテレビ会議システム「3eConference(スリーイーカンファレンス)」、Web講演会運営・配信サービス「3eLive(スリーイーライブ)」などを開発しました。
 2008年にインターネットを使ってドイツ・ベルリンからWeb講演会を、2010年には製薬業界として初めて医師単独視聴のWeb講演会を行いました。2012年、2013年には製薬企業の戦略会議中継イベントや当時最大規模の講演会「MEGA Conference」を受託し、難易度の高い複数会場のリアルタイム中継を実現しました。
 2012年頃から医療用医薬品プロモーションコードや接待規制の厳格化が進み、医療機関側の訪問規制が強まって、従来のような直接訪問による営業活動が難しくなりました。これに対して製薬業界では、直接訪問に代わる新たな情報提供の手法を模索し始めました。医師向けの講演会がホテルなどの会場だけでなく医療現場や医師の自宅、出張先などでも視聴できるようにならないか。WEB講演会のサービスを展開していた弊社には事業拡大の大きなチャンスとなりました。
 現在、製薬企業約80社の講演会に対応しており、2019年の講演会の実績は2000回以上、2020年は2500回以上を見込んでいます。近年、医療機器メーカーとの取引も増えてきました。

医療従事者の勤務環境改善から見えてくる
未来医療機器の可能性(前編)

酒井 一博氏
公益財団法人 大原記念労働科学研究所研究主幹
伊藤 雅史氏
等潤病院 理事長・院長
吉川 悦子氏
日本赤十字看護大学・准教授
根本 大介氏
デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー
坂本 郁夫氏
パラマウントベッド株式会社 常務取締役

―医療従事者の勤務環境改善について話し合う前に、医療の仕事をどのように捉えるべきなのかを考えてみたいと思います。
【伊藤】医療は医学の社会的実践です。純粋に医学のことだけではなく制度的なことも含めてさまざまな要因が絡んできます。より良い医療を目指すとなると人手やコストがかかり、経済との兼ね合いも考えなければなりません。また、医療は高い倫理性を持って専門的に取り扱うものであり、社会的共通資本です。医療は病院だけのものではないし個人的なものでもない、社会全体のものなのですね。こうした社会的共通資本という考え方を基本に置くと医療従事者の勤務環境改善につながっていくと思います。
【吉川】看護における医療は一言で言うと「ヒューマンケアワーク」。人と人が接するところが第一義的にあります。患者さんや他の医療者と濃密な接触があるのが特徴で、いかに対象に寄り添えるかが大きな命題となります。難しいのは、自分のペースやスケジュールで仕事を進められない点でしょう。ある程度こちらでプランを組み立てても、患者さんの状況に応じて立て直さなければならない。仕事の標準化が難しい職種だと思います。
【根本】医療機関の皆さんは特別感を強く持たれているように感じています。大切なものを抱えている仕事であることはわかるのですが、それが返って足枷になっているのではないでしょうか。これはすべての業界に共通しますが、改善は業界の中だけでベストプラクティスを探して行うわけではありません。他業界から良いものを取り入れて適用したりします。改善に当たっては「我々は特別だ」とバリアを張るのではなく、他の業界の良い方法をどのようにカスタマイズするかという発想が必要です。
【坂本】メーカー側から見ると医療はなかなか標準化が難しい職種のように思います。急性期の病院だけ見ても一つの標準化パターンに当てはまりません。医療機器も病院ごとにカスタマイズして納品されることが多い。弊社が製品を納入しようとすると病院ごとにカスタマイズされた情報システムに合わせなければならず、時間とコストがかかる場合があります。

【シリーズ】医療機器業界で活躍する女性達 第1回
社会貢献度の高い医療機器業界に憧れる

笠原 佑見さん
日本光電工業株式会社
営業本部 GP営業統括部 AED営業部 事業推進課


―現在AED営業部の所属ということですが、どのような仕事に取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
【笠原】AED(自動体外式除細動器)とは、けいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器です。現在、私が行っている仕事は3つあります。
 1つ目は企画管理。受発注業務のフロー改善、売上実績の管理などを行っています。企画業務としては新製品の開発にも携わっています。
 2つ目がAEDの販売促進。展示会やインサイドセールスを通じてAEDの販売を行っています。「インサイドセールス」という言葉は耳慣れないかもしれませんが、電話やメールを用いて潜在顧客から見込顧客へ、さらには新規顧客へ引き上げるよう営業フォローを行っています。
 3つ目がお客様サポート。緊急時に適切な救命処置が行えるよう、心肺蘇生とAEDの講習会のインストラクターとして活動しています。「AEDは難しい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃいますので、AEDをより身近に感じていただき、簡単に使用できることをお伝えしています。
 AEDは一般市民が使用できる医療機器ということから、企業のお客様が多いですね。また、当社は2018年12月に国内で初めて家庭用のホームAEDを発売し、家庭での心臓突然死を減らすための取り組みを開始しています。

一般社団法人 日本医療機器工業会
2020年度 定時社員総会議事録

日 時:2020年8月26日(水) 15時00分~16時00分
場 所:ホテルメトロポリタンエドモント 悠久の間

 松本理事長より開会に先立って、以下の挨拶があった。
 「本日の定時社員総会は、新型コロナの再拡大を受け、本会場への出席とWeb参加によるハイブリッド形式で行うこととなった。日医工46年の歴史で初めての試みである。また、総会後の特別講演会も初のライブ配信での講演会となるので、最後まで参加いただきたい。
 午前中、健康診断を受診してきた。師長さんに外来患者について尋ねたところ、『平常時は、800人から1,200人くらい外来患者が来院されていた。コロナ発生後から徐々に減少し、一時は600人を割るような状況もあったが、最近は少し回復してきた』と病院経営が深刻化していることを感じざるを得ない状況である。医療機器業界のビジネスにおいてもそのようなことにならぬよう、コロナには負けないという気概で我々は手を携えて、いろいろな問題を乗り越えていきたいと思っている。
 昨年6月に医機連の会長に就任し1年2カ月になる。その間、官民対話、早々からの新型コロナ対応、明後日の厚生労働省との定期意見交換会等々、慌ただしい中でも、医機連では行政への提言の一つとして、『人財育成』について医療機器業界と行政の若手が各々20数名、計約50名が集結し、医療機器を取り巻く課題を議論できる場として『医療機器のみらいを担う人財育成プロジェクト』(略称『みらプロ』)を始動した。1期2年、2カ月に1回のペースで開催し意見交換を行っていく。これからは、あらゆる面で大変な時代になると思われる。だからこそ、業界としても企業としても、将来を担う人財育成が大事だと考えている」。