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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.48 No.418 2021.10-2022.1 ダイジェスト

日医工ジャーナル・単回医療機器再製造推進協議会 共同企画
国内におけるR-SUDの現状と将来への展望(前編)

野中 寿太郎氏
日本ストライカー株式会社 サステイナビリティソリューションズ カントリーマネジャー
江嶋 敦氏
株式会社ホギメディカル 学術部
及川 信一氏
ディーブイエックス株式会社 営業推進部 営業推進課長
青木 正人氏
ディーブイエックス株式会社 営業推進部 担当課長

 

―現在、国内で流通しているR-SUDは日本ストライカー様の再製造ループ電極カテーテルのみですが、導入を検討している医療機関が増えてきているとお聞きしました。導入の経緯、導入後の評価など紹介していただけますか。
【野中】弊社の再製造ループ電極カテーテルは、2019年8月に医療機器製造販売の承認をいただき、2020年4月に特定保険医療材料として材料価格が決定し、保険収載されました。医療機関で使用されるようになって、ちょうど一年半になります。
 R-SUDの製造販売承認は国内で初めてでしたので、いろいろな活動を行いました。まず行ったのが、R-SUDについての啓発活動です。世界で進められているSDGsの視点に立った環境保全、病院の収益確保、国の医療費削減などを軸に話をさせていただき、こうしたコンセプトに賛同してくれる病院を募りました。
 弊社の製品は心臓のアブレーション治療時に使用されるカテーテルです。不整脈に関する製品を扱っているディーラー様にとってはよく使用されるポピュラーな製品と言えるでしょう。しかし、全国で8,000ある病院の中でもアブレーション治療を行っているのは多く見積もっても600施設ほどと言われています。その中でも弊社の製品を使用する可能性のある病院は約200施設で、非常にニッチな市場となります。病院全体としてはまだ大きな影響はないかもしれませんが、アブレーション治療を行っている施設の間では徐々に認知度が高まっています。いくつかの学会においても話題にしていただいており、現在、約200施設のうち数十施設の医師の方々は継続的に弊社のR-SUD製品を使用いただいている状況です。国立病院機構系、地域医療機能推進機構、赤十字病院系、済生会病院系、県立病院系など多様な病院で採用されています。
 例えば、医療費削減に対する意識が高い病院はそれを理由に採用することが多く、使用状況は全体的に上がってきています。

医療ベンチャーが予想するICT医療機器の将来と海外展開

坂野 哲平氏
株式会社アルム CEO


 2014年11月に施行された薬機法の改正により日本で初めて医療機器としてのソフトウェア、「医療機器プログラム」の枠が設けられた。株式会社アルムは、その「医療用単体プログラム」の第一号として薬事承認を受けた医療ICT企業である。産業のデジタル化、ICT化の加速度がさらに強まる中、医療機器産業もその例に漏れない。同社CEOの坂野哲平氏に医療機器のICT化の必要性と可能性についてうかがった。

―「Join」の具体的な内容について紹介してください。
【坂野】あらかじめ登録した複数の医療関係者の間でコミュニケーションを取るためのアプリです。チャットや音声・ビデオ通話機能を持っており、病院情報システム(HIS:ホスピタル・インフォメーション・システム)と連携することで、CTやMRI、心電図など様々な医用画像や手術中の手術室内のライブ映像などをリアルタイムで共有することができます。
 また「DICOMビューワー」が標準搭載されているため、医用画像を拡大・縮小・階調変更しての表示が可能となります。DICOMは北米放射線学会と北米電気工業会によって1993年に制定された国際標準規格で、CTやMRI、超音波といったデジタル画像データを通信したり、保存したりする方法を定めています。
 当初の開発目的は脳梗塞のような脳血管疾患の救急医療に用いられることでした。脳梗塞治療は時間との勝負です。発症後の迅速かつ適切な処置いかんで患者の生死や予後を大きく左右します。
 脳血管治療には専門の医師が必要ですが、治療の場に必ず専門医がいるとは限りません。そこにいる医師で対応しなければならないケースが多々あります。しかし、その際に専門医にスマホで相談することができれば適切な治療を行うことが可能になります。患部の検査画像をスマホで送り、専門医から治療に必要な処置のアドバイスを受ける。こうした医師と医師をつなぐ遠隔医療支援ツールが「Join」です。

医療機器産業のシステム再構築が迫られている

中野 壮陛氏
公益財団法人 医療機器センター 専務理事
医療機器センター附属 医療機器産業研究所 所長


 医療機器センターの附属機関である医療機器産業研究所(MDSI)は先頃、「システム全体の『リ・デザイン』」と発表した。医療機器のこれからをどのように考えるかという産業政策提言だが、「輸出からグローバル」「自前主義からオープンイノベーション」「単独・ハードから連続・DX」という3つのkey wordが掲げられている。医療機器センターの専務理事でありMDSI所長の中野壮陛氏にその詳細について伺った。

 日本の医療機器マーケットは世界市場の10分の1と言われています。日本の医療機器企業が世界で勝ち残っていくのは容易ではありません。実際、日本の医療機器は数少ない大手企業のごく一部の製品が世界ブランドになっているのみで、残念ながら多くは欧米企業の後塵を拝しているのが現状です。その大きな原因の1つは、日本の医療機器企業が国内で販売している製品をそのまま「輸出」するという考え方で海外展開を行っていることだと考えています。グローバル戦略で活動する医療機器企業は輸出、輸入という概念でビジネスを行っていません。最初から世界レベル、すなわち「グローバル」で医療機器を製造し販売しています。
 グローバルで販売している製品はそれだけ多くの数を製造していますから製造単価も安くなる。人命に関わる医療機器である場合、安全性に問題がなく高品質であることが前提です。しかし、同時に大量生産することでコストを下げ、価格をリーズナブルにすることも重要です。
 また、海外製品は世界市場を相手にしていますから、常にクライアントから様々な改善要求や刻々と変化するニーズに晒されており、そのことに絶えず対応しています。つまり製品として洗練され続けている。日本企業の場合、国内のマーケットニーズに対応した製品を開発し、販売実績で自信を付けてから海外に打って出る形が多い。しかし、日本のマーケットニーズは世界から見ると、あくまでもローカルニーズに過ぎません。これでは国際競争の舞台において海外製品と競合することは困難でしょう。まず必要なのはこれまでの「輸出」という概念を変えることではないでしょうか。最初から「グローバル」という視点で海外製品との競争を考えることだと思います。

日医工ビジョンコミッティ新メンバーインタビュー
ビジョン達成の実現、コンプライアンス遵守の徹底を目指す

松原 一郎氏
日医工副理事長
コンプライアンスコミッティ議長
マネジメントコミッティ副議長


 2019年11月、日医工ビジョンコミッティは活動を開始しました。コミッティは「マネジメントコミッティ」、「政策・戦略コミッティ」、「コンプライアンスコミッティ」、「安心・安全コミッティ」の4つで構成されています。コミッティの活動は日医工5つのビジョンを基本とした委員会活動の活性化を目的の1つとしており、円滑な委員会活動をサポートする総務委員会委員長の立場にある私は、設立前後からその動きをつぶさに見てきました。そうした意味合いもあって、今回、新たなメンバーとして私が選ばれたのだと思っています。
 しかし、ビジョンコミッティがこれから本格的な活動に入ろうと思った矢先、新型コロナウイルスの感染拡大が起こりました。WEB会議が主体となり、コミッティの具体的な活動が半ば休止状態になってしまいました。来年以降、改めて活動を再開して行くといった形です。

「ビジョン達成のため具体的な道筋を立てる」
 マネジメントコミッティでは副議長として石塚悟議長をサポートしています。このコミッティは副理事長、総務委員会、事務局と協力連携を取りながら、日医工ビジョン実現のための事業活動全体の運営推進、円滑化が目的となっています。総務委員会の活動の延長にあるので、私自身のこれまでのスキルが活きてくるだろうと考えています。
 具体的には各コミッティの取りまとめ、各委員会の活動がビジョンと繋がるように調整していくのが主な役割です。会員企業の一員として、ここ数年、日医工の委員会活動は現状維持の状態だったという印象があります。医療機器業界の雄として団体カラーを強く打ち出さなければならないと思っていたところに、ビジョンコミッティが立ち上げられました。日医工が掲げたビジョン達成のため具体的な道筋を立てる、こうした体制づくりは必要なことであり、非常に歓迎しています。  また、現在の日医工の委員会の構成は、長い活動の歴史の中で細分化されてきました。しかし、中にはいくつかの委員会を発展的に統合し、より効果的かつ効率的な委員会として再編できるものがあるように思います。ちょうど、そうした見直しの時期に来ているのではないでしょうか。